井澤由美子の食薬ごはん Yumiko Izawa

食薬ごよみ

四季のサイクルに合わせて食すことが、身体を健やかに導く手助けをしてくれます。
季節の食材とその由来や歴史、食にまつわるお話をご紹介します。

6/26

ピンクペッパー・人気スパイス・spice

ピンクペッパーは赤いコショウの実で、完熟後に収穫して外皮を剥いていないもの。ピンクペッパーはコショウボクの実で、南アメリカが原産地のウルシ科サンショウモドキ属、コショウボクの赤い実を乾燥させたものです。辛味は少ないですが、香りがよく指でスッとつぶれる柔らかさ、サラダはもちろん料理のトッピングに彩りよく使用されることが多い。初心者にも扱いやすく、おしゃれなチョコレートやお菓子にも多様されていますね。似たものに、西洋ナナカマドの実がありますが、此方の原産地はヨーロッパからシベリア、主に肉料理などに使用されているそうです。どれにしてもひと瓶あると、お皿の上がパッと華やぐので重宝します

6/25

赤しそ・ゆかり・抗酸化作用

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抗酸化作用が高いアントシアニンが豊富な赤しそ。お弁当のごはんなどによくふってある風味のよいしそのふりかけ(ゆかり風)は、手作りできます。梅干しを漬ける工程で、本干しするときにいっしょに漬けてあった赤しそも広げて干します。カラカラに乾いたら、そのまま保存瓶や缶に乾燥剤(お菓子や海苔についているものでOK)とともに入れて保存してください。食べる時に手でもんで細かくほぐして使います。気分でごまや青のりと合わせても良いですね。ふりかけにする以外に、塩もみしたきゅうりやキャベツと和えるなど、使い勝手がよいですよ。
赤しそは胃液の分泌をよくし、食欲増進させてくれます。しょうがを漬けるときに使ってもキレイに発色します。

6/24

杏・あんず・杏仁・薬膳デザート・漢方

杏・杏仁・あんず・食養生・薬膳・食薬ごはん・漢方

ほんのり甘い香りに気づいて見上げると、杏の実がたわわ。杏のやわらかな色合いを目にすると幸せな気分が生まれます。完熟の杏は香りがよく、果肉も食べやすいですね。旬が短いので、見かけるたびについ買ってしまいます。子供の頃によく食べたクレープは、生クリームやチョコバナナではなく、甘酸っぱいあんずジャムを薄く塗ったものでした。感じる温かいジャムは杏の香りが際立って、子供心に本当に美味しく感じたものでした。
杏は、ドライフルーツなら手軽に料理に使えますよ(私は食品乾燥機でセミドライにしています)。微かにレモンの香りのする黄色いパプリカとオリーブオイル、白ワインで蒸し煮にして冷ませば、ナチュラルな甘酸っぱさで、食べやすい鮮やかな冷静サラダになります。
杏はカロテンが非常に豊富で、粘膜をうるおす効能があり、種の中心部にある(仁・じん)は漢方薬の原料となる杏仁(きょうにん)。杏仁豆腐の素として有名ですね(種は生では食べられない、粉状にして利用されることが多い)。
薬膳では、白きくらげは肺を潤す食材と言われています。咳や痰を抑えるデザートをご紹介します。小鍋に白木耳と水、氷砂糖とを入れてトロトロになるまで一時間半ほどゆっくり煮て、杏仁の粉を加える。冷たくしても温かくしてもおすすめです。気分でレモンスライスを加えてさっぱりさせたり、生クリームで滑らかなコクを出したりと、アレンジしても美味しいので毎回悩ましいのです。

6/22

ラペソー・発酵食・ミャンマー

ラペソー・発酵食・発酵食品

ラペソーは約半年から1年ほどかけて茶葉を発酵させたミャンマーの郷土食で、漬物のようなイメージです。ミャンマーはイギリスの植民地だったのでお茶を飲む文化も盛んな土地柄で、飲むだけでなく料理にも利用されています。ラペは「茶」、ソーは「湿った」の意味を持ちます。確かにしっとり湿っており、ほのかな酸味があって、後味に少し苦味が残ります。
ミャンマーのお母さんが作るお惣菜は、苦味のある野菜をクタクタに煮たり、辛味とたっぷりのオイルで煮た魚、スパイスでじっくり煮込んだ肉など、保存性も高い料理が多いようです。
買って帰ったラペソーは乳酸キャベツと混ぜてカレーの付け合わせにしたり、唐辛子入りの酢をかけたりして楽しんでいます。現地ではラペットウというサラダにすることも。ラペソーと刻んだ生野菜に、レモン果汁、にんにく、青唐辛子、すりごまなどで味付けし、アジョゾンといわれる素揚げした豆やナッツがたっぷり混ぜてあります。旨味のある干しえびも入って、食感のコントラストも楽しいのです。タイの北部や中国雲南省でも食べられるラペソーは、実に興味深い発酵食です。

6/20

空豆・そら豆・蚕豆・天豆・夏豆・Broad bean

井澤由美子・食養生・食養生・そら豆・空豆・天豆・おたふく豆・蚕豆

千葉に畑を借りていろいろな野菜を栽培しています。5月からはそら豆が最盛期。見ためはお店で販売されているような美しさはないのですが、剥くと青々としてぷっくりとした大きな実が飛び出して、豆の香りがフン鼻をかすめます。採りたてのそら豆を熱湯に入れ、塩梅よく茹でますが、皮が柔らかいのでそのまま食べた方が美味しい。下ごしらえの時に、皮に切り込みを入れなくていい程です。そら豆ってこんなに美味しいものだったのかとつくづく思いながら、仕事終わりの夕暮れに冷えたワインのお供に楽しんでいます。少し厚めにスライスした発酵バター、バケット、粗塩とペンチで割ったこしょうを添えて。
そら豆にはビタミン、たんぱく質、カリウムが豊富で、豆の中でも栄養価が高く、疲労回復効果があります。
フジTVの「四季彩キッチン」でもご紹介したそら豆の素揚げは、皮に切り込みを入れて、中温から揚げるのがポイント。温度が適切だと、油の中で皮から実が勝手に取れるので手間いらず。鮮やかになって浮いてきた実から先に取り出し、皮は茶色く揚がったら引き上げます、、全体に軽く粗塩をふってどうぞ。皮もカリカリして実に良いつまみになります。お酒を提供するお店ではそら豆を(天豆)と書いてある事があります。心意気も粋なようで嬉しくなり、ついつい注文してしまいます。

6/19

シラス・しらす・しらす干し・ちりめん

井澤由美子・春魚・旬魚・食養生・美味しい・お弁当・食養生・まいにち食薬養生帖・シラス・しらす・しらす干し・ちりめん

私は無類のしらす好きです。早朝の海辺に行って、しらす漁に鉢合わせたらとってもラッキー! 鮮度が命の生しらす。透き通った体でピチピチ飛び跳ねて元気。この鮮度を保つ為に、漁師さんたちは漁が終わると全速力で浜に戻ります。とれたての生しらすを釜茹でしたものが、釜茹でしらす。そこから数時間干したものがしらす干しで、長く天日干ししたものがちりめんじゃこです。しらすの産地では、しらすをパスタやピザ、トーストなど、日常の食卓に羨ましいほどたっぷり登場します。
これ以上入れたら握れないかもと思うくらいのしらすを具にしたお結びや、炊きたてご飯に贅沢にのせていただくしらす丼は至福の味。お弁当にも香り高い青海苔と、手作りの赤しそふりかけをアクセントにしてたっぷりと。月並みですが、きゅうりやわかめの酢の物とも好相性。酢と合わせると、しらすのカルシウムがより効率よく摂取できます。

6/18

与論島・壺酢・きび酢・黒糖

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与論島のさとうきび酢を初めて口にした時は、そのコクにハッとしたことを今でも鮮明に覚えています。島では至る所で黒糖が売っており、きび酢は溶かすと奥深いパンチのある甘酢がすぐに作れます。朝市で初めて見た赤瓜(モーウィ)はきゅうりの仲間で、生で食べても良いそうです。農家のお母さんに食べ方を教わりました。生で皮をむいて薄切りにし、島の粗塩で軽くもんで即席の甘酢に漬ける。半日ほど冷蔵庫で冷やすと赤うりの甘酢漬けは、パリパリとした食感が独特で美味しい。疲れがスーと抜けていく甘酢漬けです。
90歳を過ぎたおばぁが「島の人はきび酢でお刺身を食べる」と教えてくれました。酢は防腐効果が高いので南の島では理にかなった食べ方です。暑さでバテそうな体にもクエン酸が良く効きます。
島と共に発展してきた発酵調味料のきび酢は、冬にきび砂糖を収穫して仕込むそうです。のんびりした畑に壺酢が行儀よく並ぶ風景にほっこりしました。

6/17

梅仕事・昔ながらの梅干し・梅

梅・梅干し・梅しごと・南高梅

梅干しは防腐作用が高いので、この季節のお弁当にかかせませんね。お米に入れて炊いても良いもの。疲れをとるクエン酸も頼もしい。
梅干しを作るときにできる白梅酢を手塩の代わりにして握ったお結びは、手つくりの調味料だからか、いつもより心が華やぎます。ふくよかな香り高い梅は料理にも使いやすいので、私は梅干し用に大きめの完熟梅購入します(まだ緑色で硬い時は、真っ黄色になるまで常温で追熟させる)。500g(だいたい10〜13個)は、30分水に漬け水気をしっかりふき、竹串でヘタを取る。ホワイトリカーや焼酎など臭みのないアルコール大さじ1で密封袋の中をさっと消毒し、捨てる(袋の中はふかなくてOK)。梅と粗塩70〜90gを入れ、袋の上から馴染ませる。粗塩と梅を入れ、同量の重しをして1日1回上下を返して2日おき、さらにそのまま20日間おきます(いずれも冷暗所に置く)。梅雨があけたらザルに広げて、好みの状態になるまで2〜5日間天日で干し、白梅酢に戻す(私は2日間干しています)。
お粥に梅干しは定番の組み合わせ。唾液の分泌を促し、消化力を高める働きがあるので、お粥に添えると効果的。味だけではない日本の素晴らしい知恵です。
ちなみに梅干しは下痢や便秘にも効能があります。

6/13

丁子(ちょうじ)・丁香(ちょうこう)・クローブ・スパイス

生薬・クローブ・スパイス・丁子・丁香

お茶が好きで、毎日リラックスしたい時にいただきます。朝から晩まで飲むので、玉には胃を温めながらお休みします。
白湯を作るのと同じように、やかんのフタを開けて15分ほど湯を沸かします。この時クローブも一緒に入れて煮出し、蜂蜜を入れたカップに注ぎます。それをゆっくりいただくとバニラのような香りや刺激的なスパイシーな風味に、張り詰めた気が緩んでくるのがわかります。
クローブは漢方では丁香と呼ばれる生薬で、体を温める効能があり、胃や脾、腎が冷えて痛いときにも有効なスパイスとして知られています。西洋ではクローブと呼ばれ、肉の塊に刺した煮込み料理やシチュー、カレーにも欠かせません。オレンジとの相性がよく、デザートやお菓子にも使われる他、オレンジに刺して乾燥させ、香りのポプリとしても親しまれています。
ちなみにクローブは、ネパールの民間療法では歯痛止めに使われたり、インドネシアではタバコの香付けに使われたりに、虫除けスプレーに配合されたりと世界中でいろいろな用途に利用されています。

6/12

蘇陽・赤しそジュース

紫蘇ジュース・赤紫蘇・紫蘇・美肌ジュース

キレイな色の元気がでる旬のジュースです。色が濃いめの赤しそ(2袋)を選び、葉だけを摘んで水を張ったボウルに入れてよく洗い、ザルに上げます。鍋に約1リットルの湯を沸かし赤しそを加えて5〜8分茹でる。鍋からしそだけをザルにとりギュッとしぼり、エキスを全て鍋の中にしぼります。甜菜糖(またはきび砂糖)は半カップ〜好みの量を入れてとかし、酢50cc(またはレモン果汁)を加える。一瞬で色鮮やかになる嬉しい瞬間です。ますよ、冷めたら清潔な瓶などに入れ、冷蔵庫で保存します。
赤しそは殺菌効果が高く、色素成分であるポリフェノールには高い抗酸化作用があります。香り成分は胃液の分泌をよくし、消化を助けます。美しく健康にも良い赤しそジュースはこの時期だけのお楽しみです