井澤由美子の食薬ごはん Yumiko Izawa

食薬ごよみ

四季のサイクルに合わせて食すことが、身体を健やかに導く手助けをしてくれます。
季節の食材とその由来や歴史、食にまつわるお話をご紹介します。

7/28

カシス・クロスグリ・ブラックカラント

濃紫のカシス。カシスはフランス語でグロイゼイエ・ノワール。英語ではブラックカラントといい、日本名は黒すぐり(または黒ふさすぐり)。スピリッツと合わせたカシスリキュールや、ジャムになっているものがお馴染みですね。カシスに含まれる色素成分(カシスアントシアニン)は、ピントフリーズ現象(眼精疲労からくる視界がぼやけた現象、眼のかすみ)を改善する効能があるそうです。カシスはビタミンC、ビタミンE、ビタミンA、亜鉛、鉄分、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルもバランスよく含んでいます。
抗酸化力が高くアンチエイジングをサポートし、女性ホルモンのバランスも整えてくれるカシス。国産は今が旬です、私は北海道の道の駅で見かけました。

7/27

生ハム・ハム・世界3大ハム

生ハム・ハム・スペイン

前菜や料理に欠かせない旨味の強いハムは、ワインに合う至福のつまみです。世界3大ハムには、プロシュート、ハモンセラーノ、金華ハムがあります。
イタリアパルマ地方で生産される柔らかく食べやすい生ハムのプロシュートは、パルマ公爵の王冠の刻印が押されます。
スペイン産のハモンセラーノは白豚の後ろ足が原料で、塩だけで熟成させたもの。ハモンはハム、セラーノは山地の意味を持ちます。ちなみにハモンイベリコは黒豚のハムでさらに長期熟成させて作る高級品で、その中でもランクが3つに分けられています。そして中国が誇る金華ハムは脂肪が少ない良質な赤身の金華豚が使われ、その熟成された塩気や旨味は頂湯(スープ)には欠かせません。
日本では塩漬けにした豚肉を丁寧に長期熟成さたものもありますが、一般的には調味料で味付けしたハムが多く出回っており、気軽に楽しめます。熟成期間が無い(または旨味がほどほどで価格は安め)。旨味はほどほど価格が安めで気軽に使えるにがよい点です。
写真は、昨年スペイン旅の折に生ハム専門店でつまんだ切りたてのハム。暑い昼さがりに冷えたビールやカヴァと堪能しました。ふんわりした口あたりと、程よい脂と塩気が絶妙。常温なのも美味しさのポイントでした。イタリアワインにはイタリアのハム、スペインハムにはスペインワインで楽しむ。慣れたら、熟成期間や産地を知って食べ分け、合うお酒をチョイスするとステキです。

7/26

胡椒・ブラックペッパー・こしょう飯

インドが原産地のこしょうは中国から伝わり、古くから日本でも食されてきた辛味調味料。江戸時代には既に、うどんやごはんに使用されていました。食をそそる辛味と香りの『こしょう飯』は食欲が落ちるこの季節にピッタリ。ごはんに挽きたて、あるいは潰したてのこしょうをふり、お出汁をかけたものはお出汁をかけたものはサラサラと胃に収まる。冷やしあんかけにし、小椀に盛るとおもてなしの〆に最適。お好みで古漬け、梅干し、おろし生姜、刻み薬味などを添えても。上質のねぎま鍋のスープをしめのご飯にかけ、潰したてのこしょうを振ると最高。大好きだった大塚にある江戸料理の名店なべ家さんを想い出します。
こしょうは胃腸の調子を整え、消化不良を促します。辛味成分が代謝を上げるので、脂肪が燃焼されやすくなります。最近では生の塩漬けこしょうが手に入るようになり、料理の幅がますます広がりました。

7/25

無花果・いちじく・蒸しいちじく

古代ローマでは「不老不死の果実」とされていたいちじく。いちじくは和食でも繊細な白和えなどいろいろな食べ方がありますが、是非一度お試しいただきたい一品をご紹介します。完熟いちじくが手に入ったら皮をむいて器に入れて蒸し、粗熱をとって冷蔵庫で蒸し汁ごと冷やしておきます。次にタレを作ります、指で砕いたカシューナッツ3、4個を乾煎りし、香りが出たらごま大さじ1を一緒に煎ります。熱いうちにすり鉢ですって、メープルシロップ、醤油各同量、酢少々で伸ばしながら好みの味に整えます。これをいちじくにかけます。香ばしく甘みのあるとろりとしたタレがいちじくに絡まってなんとも美味。冷たいことも美味しさのポイントです。ビールよりスパークリングか白ワイン、日本酒がよく合います。
繊維が豊富ないちじくとごまを合わせるとグンと便通効果が上がりますね。薬膳ではいちじくは体の余分な熱をとり、喉の腫れをおさえます。更年期の女性によい効能もたくさんあり、母乳の出もよくすると言われています。

7/22

バジル・ハーブ・ジェノベーゼ・バジルペースト

井澤由美子・まいにち直訳養生帖・薬膳・食養生・バジル・スパイス・ハーブ

バジルを目の前にすると深呼吸したくなります。鎮静作用、強壮作用があるスパイシーな香りはイライラを鎮めてくれますよ。今日は綺麗なグリーン色のジェノベーゼペーストの作り方をご紹介します。バジル、パセリ、イタリアンパセリ等好みで合わせて40gほど使います。かたい軸は落とし、熱湯に塩を加えてさっと茹でる。氷の入った水に放してしっかり冷やして、水気を絞る(色褪せ防止の作業)ボウルに松の実やくるみ30g、潰したにんにく半かけ、粗塩、こしょう、茹で各汁少々、すりおろしたパルミジャーノ(粉チーズ)半カップ、オリーブオイルを半カップ弱を加えてハンドミキサーで攪拌し、水気を絞ったハーブを入れてさらに攪拌します。好みで生のハーブを少々を足しても。清潔な密封容器で冷蔵保存します。冷蔵保存も可能ですが、時間とともに色が少しくすみます、冷凍するとあざやかに保てます。
色鮮やかなジェノベーゼは、パスタはもちろん、茹で野菜やサンドイッチのソースに肉や魚にかけるなど多様。スープに落とすと、お皿の上がパッと美しく映えてコクのある清涼感が宿ります。

7/21

鰻(うなぎ)・土用の丑の日・食養生

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今日は夏の土用の丑の日。今年は2回あって、今日は一の丑の日で、二の丑の日は8月2日です。
うなぎは昔は白焼きにして白焼きにして、塩梅よく伸ばした味噌やお酢などをつけていたようです。醤油、みりん、酒を使って煮詰めたタレをぬる蒲焼が主流になったのは、江戸時代中期だそう。関東風の蒲焼は背開きで蒸し焼きにするのでふんわり柔らかくタレが濃いめ、関西風は腹開きで蒸さないのでパリッとしています。
うなぎはビタミンA、B群が豊富で疲れた時時にお勧めの滋養強壮食。質な天然のうなぎは、食べごたえがあって力強い旨味と後味に余韻がある感じ。香ばしく焼けた少し厚めの皮が美味しいなぁと思います。食べやすい安定価格の養殖はお重などによいですね。黒もち米を醤油麹で味を付けて炊き、うなぎをのせて蒸すと味のついたもっちりとしたおこわ。ふっくらしたうなぎがよく合います。養生にもなるうなぎおこわは、山椒などをあしらうとおもてなしにもぴったりです

7/20

ターメリック・スパイス・ウコン

ウコン・ターメリック・ターメリックライス・スパイス

ターメリックはインド原産の生姜の仲間で、別名ウコン。肝機能を回復させたり、ボケ防止にも良いと言われています。鮮やかな黄色が特徴のスパイスで、色素成分のクルクミンは実はポリフェノールの一種。カレーの色付けに使用する重要なスパイスですね。体を温める作用があるので、風邪のひき始めにもお勧めです。ゴールデンミルク(ターメリックラテ)を作る時は、少量のミルクにターメリック(から炒りしても)とメープルシロップをよく混ぜてから、残りのミルクと合わせます。温かくても冷たくても美味しく頂けますよ。ターメリックはピクルスを作る時に加えると野菜が鮮やかになり、抗菌効果もあるので日持ちもします。
エスニックなカレーを作る時には、ご飯を炊く時に叩いたパクチーの根の部分を加えて香りを付けます。お米にターメリックパウダー、粗塩をひと混ぜしから、パクチーの根、オリーブオイル、好みで唐辛子、クローブ、カルダモンなどのスパイスと一緒に炊き込む。鶏ガラスープの素などを加えて味付けしても。カレーの他、お弁当にもいいでですね。

7/19

鬼灯・ほおずき・食用ほおずき・ゴールデンベリー・スーパーフード

鬼灯・ほおずき

浅草など、あちらこちらで開かれているほおずき市は、江戸時代から続く日本の夏の風物詩。季節になると母が必ず買ってくるほおずきを見ると、赤い身の中から種だけを取り出す遊びに挑戦し、苦味をこらえて膨らませていた幼少の頃を懐かしく思い出します。ある日の晩、ほおずきの赤い外袋に何気なく夕食のお惣菜をそっと入れて、食卓に出してくれた母を素敵だなあと思った記憶があります。
17〜8年ほど前に、海外の黄色い西洋食用ほおずき(ゴールデンベリー)を初めて口にした時は、そのココナッツの風味がする美味しさにびっくりしたものです。今日ではスーパーフードとして知られ、ドライフルーツも手軽に購入できるようになりました。国産の食用ほおずきに北海道で出逢った時の感動も忘れられません。色とりどりの紙風船のような優しい色合いが美しく、嬉しくなってお土産にたくさん持ち帰りました。これから秋にかけてが旬なので、ご興味のある方是非。

7/17

李・すもも・プラム・かき氷

井澤由美子・かき氷・すもも・季・プラム・プルーン

すももは、古来に中国から伝わった日本すもも「プラム」と、ジュースやジャム、ドライフルーツなどに加工されることが多いヨーロッパ原産の西洋すもも「プルーン」の2つに分類されます。日本すももはもぎたては酸味が強く、酸っぱい桃と言う意味合いから「すもも」と呼ばれるようになったそうです。
みずみずしいという言葉がぴったりな甘酸っぱい果肉は、ありそうで他の果物にはなかなかないもの。旬が短いので完熟の実を思いっきり堪能します。保存用には、皮ごと氷砂糖と優しく煮てシロップを仕込みます。ほんのりした淡いピンク色も可愛らしい。
私がかき氷屋さんに率先して足を運ぶのは、限定のすもものシロップがある時期だけ。柏にある三日月さんでは、氷の温度や削り方にもこだわっているので口どけのよいエアリーなかき氷が楽しめます。甘酸っぱいすもものシロップの組み合わせは香り豊かでナチュラル仕上がり、互いを繊細に引き立てます。
すもものクエン酸は肝機能を高め、中医学では血の巡りを良くし精神安定にもよいとされています。

7/15

旅先・お弁当・駅弁・湖北のおはなし・駅弁の日

駅弁・お弁当・旅先・駅弁の日

唐草模様の包みをほどき、竹スダレで覆われた木箱のお弁当箱を開けてみると、その温もり感に思わず笑みがこぼれる。
お献立もちゃんと付いていて、お嫁さんや孫の為におばあちゃんがお弁当を作って持たせてくれたストーリーまで書いてありました、お弁当の名前は「湖北のおはなし」。中身はこんな風です。鴨の粒こしょうロースト、ごまをまぶしたかしわのすき焼き、永源寺の修行僧には欠かせないと言うこんにゃくの田舎煮、大豆と川えびの煮物、卵焼き、ねぎと揚げのぬた、十五夜の小芋、梅干し、山ごぼう、赤かぶの漬物。もっちりした山菜ごはんの下には本物の桜葉が敷いてあり、ほんのりと香ります。サイコロの箱に入ったお口直しの飴まで優しい。
東京から福井出張の折、乗り換えの米原駅のホーム真ん中で井筒屋さんの売店を見つけました。聞けば100年を超える老舗だそう。滋賀県と旧近江国北東部の湖北地方の名産品を詰めた温もりのあるお弁当は、車窓から見える雪景色とリンクしてなんとも風情があり、良い旅になりました。次は「琵琶湖の鮎氷魚と一夜干し」弁当を楽しみたい。ちなみに明日は駅弁の日です