井澤由美子の食薬ごはん Yumiko Izawa

食薬ごよみ

四季のサイクルに合わせて食すことが、身体を健やかに導く手助けをしてくれます。
季節の食材とその由来や歴史、食にまつわるお話をご紹介します。

10/20

秋鮭・秋味・秋の味覚・鮭の黄金焼き・料理教室

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産卵直前の川に上がる前の秋味、メスのお腹を裂くとすじこが出てきます。おろして切り身にし、2つに割った頭は一晩塩漬けにし、酒粕、白味噌、秋田味噌を加えて三平汁風にすると美味しい。大根、にんじん、ごぼう、生姜など根野菜をたっぷり入れます。

鮭に多く含まれるアスタキサンチンは抗酸化力が高く、体を温め、肩こりや、眼精疲労、体の疲労感を回復するそう。シワやシミが薄くなるなど女性に特に嬉しい食材でもあるのです。北海道に行くと珍味の「メフン」(鮭の腎臓の塩辛で、半年から1年くらい塩付けにしたもの)があります。日本酒のお供に最高ですが、塩辛のパスタがあるように「メフンのパスタ」なるものもあって楽しいものです。

先日の食養生料理教室でご紹介した秋鮭の黄金焼きの作り方です。秋鮭にお酒と塩麹を少々なじませ、15分ほど置きます。水気を拭き、よく温めた魚グリルで8割方焼きます(焼くときは麹が焦げるので中弱火に)。これに卵黄に塩麹適宜をよく混ぜたものを2、3回に分けて塗る。表面をこんがりさせたら出来上がり、秋の食卓がパッと華やぐ簡単レシピです。年中出回っている鮭ですが、この時期ならではの天然鮭は滋養もたっぷりです。

 

10/17

秋の味覚・みょうが・食養生

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白っぽく可愛らしい天然の秋みょうが、今年もそろそろ終わりです。小ぶりのサイズを目にしたら、早々天つゆや香り塩を仕込みます。薄く衣をつけた揚げたてのみょうがを一口でほうばると、香りが鼻を抜け、しゃきしゃきとした食感が何とも心地よい。秋の醍醐味ですね、うどんやお蕎麦の付け合せにも最適です。

みょうがの香り成分には発汗作用があり、血行を良くします。消化をよくする効能も期待できます。色も美しいので、何かとお料理のアクセントになりますね。3〜4月頃が旬の茗荷竹は若い頃の茎です、7月ごろの早(わせ)茗荷は比較的小ぶり、八月に入ると赤く丸みを帯び立派になり、秋口になると白っぽく瑞々しい小ぶりの茗荷が出回ります。この茗荷が私は一番好きですが、東京では一瞬しか出回らないので貴重です。

みょうがをさっと茹で、熱い内に甘酢に漬ければ鮮やかに発色し、日持ちするピクルスになります。これを刻んでご飯に混ぜれば即席のお寿司がすぐに作れます。茗荷をつけた甘酢に今旬の焼き鮭や、じゃこをくぐらせてご飯に混ぜるとさっぱりとした旨味で、食欲がない日にも箸が進みます。

10/14

いちじくレシピ・蒸し無花果・秋の食養生

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古代ローマでは「不老不死の果実」とされていたいちじく。いちじくは和食でも繊細な白和えなどいろんな食べ方がありますが、是非一度お試しいただきたい一品をご紹介します。

完熟いちじくが手に入ったら皮をむいて器に入れて蒸し、粗熱をとって冷蔵庫で(蒸し汁ごと)冷やしておきます。次にタレを作ります、指で砕いたカシューナッツ3、4個を乾煎りし、香りが出たら胡麻大さじ1を一緒に炒ります。熱いうちにすり鉢ですって、メイプルシロップ、醤油、酢各少々で伸ばしながら好みの味に整えて、さらによくすり混ぜます、これを冷やしたいちじくに適宜かけます。香ばしい香りとトロリとした甘みがいちじくに絡まってなんとも美味、冷たいことも美味しいポイントです。ビールよりスパークリングか白ワイン、日本酒がよく合います。繊維が豊富ないちじくと胡麻を合わせるとグンと便通効果が上がりますね。

シンプルな温かいデザートにしたい時は、ちょうど今出回ている蜜柑を絞って蒸します。無花果の甘さを蜜柑の酸味がスッキリと引き立て、美しい天然の赤色が映えます。その他に、皮をむいたいちじくをトースターで香ばしく焼き目をつけ、ポッタリと甘く練った味噌や、ブルーチーズをふんわりとホイップして添えても美味しいものです。

いちじくは体の余分な熱をとり、喉の腫れをおさえます。更年期の女性によい効能もたくん、母乳の出もよくすると言われています。

 

10/13

醤油麹・手作り発酵調味料

麹は蒸した穀物や豆に麹菌という微生物を繁殖させたもの。「米麹、麦麹、豆麹」などの種類があります。しょうゆ麹はしょうゆに米麹を加えてさらに発酵させたものです。
アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼのこの三大消化酵素が独特のうまみを作り、細胞を活性化させるのでエイジングケアや疲労回復などに効果があります。砂糖やみりんを使用しなくてもまろやかに仕上がるので、ダイエットにもお勧め。作り方(市販の麹(200g)一袋を袋の上からもんで細かくし、ボールに入れてさらに手でこすり合わせるようによくすり合わせ細かくします。消毒した保存容器に入れ、醤油400〜450ccを注いで混ぜる(1対1の割合でも良いのですが、麹や醤油の濃度によって水分が足りない時があります。ある程度加えたら様子を見て好みの加減に足して下さい)常温で1〜2週間くらい1日1回ふるか混ぜるかしてトロミがでたら出来上がりです。発酵メーカーがあれば60度で一晩で出来ます。

自家製の調味料は好みの味にでき、熟成期間で変わる味の変化やとろみなどを含めて育てる楽しみがありますね。
生姜焼なども醤油麹だけでパパッと美味しく柔らかい、私はオールインワン調味料と呼んでいます。

10/11

れんこんレシピ・ハス・喉の不調   秋の食養生

蓮根・食養生・井澤由美子・はす・薬膳・お椀・秋の食材・喉の不調

蓮根は調理の仕方によって、いくらでも表情を変えることが出来る魅力的な野菜。蓮根に含まれるポリフェノールには抗酸化作用や殺菌作用があると言われていますが、この成分はわずかながら皮の方に多いのです。なので、剥いてしまうのはもったいない。私はたわしでこすって調理します、香ばしさも感じて美味しいなぁと思うのですが、皮の硬さが気になる方は包丁の背でこそげたり、薄く剥いて下さい。

スッと糸引く縦切りもお勧め、切り方や厚さによって食感が変わります。散らし寿司やお稲荷さんには薄切りでさっと茹でてから甘酢漬けにし、胡麻と合わせると美味さが倍増します。

すって加熱すると自然なとろみがつきます。椀ものなどや葛湯に加えると喉の痛みや咳が鎮まります。写真はNHKきょうの料理でご紹介した蓮根とおぼろ昆布のお椀です。小鍋に300ccの水とすりおろし蓮根大さじ4を入れて中火にかけ、煮立ったらアクをとりながら5分ほど煮る。醤油少々で味つけし、椀にもっておぼろ昆布を添える。

蓮根はビタミンCも豊富です。レバーなど鉄分が多い食材と合わせた煮物や炒めものなどにすると相乗効果で貧血予防にも良い一皿になります。コロンと丸い小さめの先方部分はシャキシャキした食感、掘り立ては生でも食べれ、梨のような風味です。長方形の部分はデンプンが多いのでとろみが多いようです、料理によって使い分けると楽しいですよ。

10/7

秋のフルーツコンポート・美肌・美容薬膳

井澤由美子・美容薬膳・食養生・漢方・薬膳・コンポート・無花果・柿・梨・喉を潤す・薬膳

自然のサイクルは偉大です。人間の体調に合わせるべく、四季の食物が先手を打つように実りの時期を迎えます。秋のこの季節は、体の内も外も乾燥に対するケアが大切になってきます。肺や呼吸器を潤すと水分がより良く体に巡るので、肌もキレイになりますよ。今が旬の梨、イチジク、柿などの呼吸器系の状態を整える果物の薬膳コンポートはお勧めのデザートです。

柿は体を冷やしますが、カロテンが豊富で粘膜を保護し、二日酔いにも効果的。体を温めて気のめぐりを良くするシナモンや八角などのスパイスと合わせます。作り方は、柿1個、梨1個、イチジク2個の皮をむき、食べやすい大きさに切ります。鍋に水500cc、白ワイン100cc、氷砂糖150〜200g、八角、シナモン、カルダモンなど好みのスパイス適宜を加えて中火で煮る。氷砂糖が溶けたら、梨を加えて10分ほど弱火で煮て、柿とイチジクを加えてさらに8分ほど煮ます。粗熱が取れたら冷蔵庫で冷やし、好みで蜂蜜や柑橘をほんの少し落としても美味。便通作用を促し、咳や痰に有効な秋の果物を美味しく堪能して下さい。

日々の食を何となく口にするより、食材の持つさまざまな効能を実感しながら、心と体が潤うメニューを心がけると免疫力もアップし、お料理がグンと楽しくなります。

10/5

栗・栗ご飯の作り方・老化防止・美容食

井澤由美子・老化防止・アンチエイジング・・お弁当・栗・栗ご飯・炊き込みご飯

老化防止のケアを担うなら、腎の機能を元気にする事が大切です。生命力を司る肝腎要の腎の弱りは、足腰のだるさや頻尿、抜け毛など、老化という現象をひき起こします。

腎を助ける食材として、中医学薬膳では栗が知られています。旬の栗は美味しいだけではなく、ビタミン類が非常に豊富。繊維も多く、抗酸化作用のタンニンも含まれているので、栄養学的にもとても美容に良い食べものです。

もち米をひとつかみ加えたお米と栗を合わせると脾胃(ひい)の働きを助け、疲労を回復します。毎年この頃になると作る栗ご飯は、米2号に対し、調味料は酒大さじ2と塩小さじ半、薄口醤油小さじ半にほんの少しの米油を加えただけの極シンプルなもの、栗の香りと甘みが引き立ちます。

栗を剥いたあと、浸るくらいの水に塩と砂糖少々を加えてうっすら下味をつけて炊く。一手間ですが、和食屋さんの味に近づきますよ。渋皮に含まれるタンニンには抗酸化作用があるので、好みで皮を少しつけて炊いてもよいでしょう。

栗は、密封袋に入れて冷蔵庫で数日間置くとデンプンが糖に変わって甘くなるそうです。

10/3

棗の食べ方・生薬・健康食

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日本の棗(ナツメ)は9月〜10月頃に実る小粒の実。若い時は青りんごのような風味で、赤く完熟すると柔らか甘くなります。中国では庭にナツメの木がある家庭が多く、1日3個食べると老化防止に良いとされ、ポピュラーに口にするそうです。台湾のなつめは大きくて食べ応えがあり、日本でもフレッシュなものが手に入ることも。

ナツメは昔から珍重される五果(季・杏・栗・桃・棗)の一つで、乾燥させたものは大棗(たいそう)と呼ばれ、中医学では頻繁に使われる生薬。気を補い、血流を増やし、精神を安定させる効能があります。風邪の引き始めの頭痛や首の根の痛みなどに効く葛根湯(かっこんとう)にも配合されています。

ナツメ茶を作る時には、そのままではななく半分にちぎって煮出して下さい、相性の良いクコや紅茶とブレンドしても。毎年手摘みのナツメを農家さんに送って頂きます。蒸して乾燥させて空き瓶に保存したものはスープ(参鶏湯)やお茶に。茶ザラメとブランデーに漬けるナツメ酒には相性の良いスパイスを足して、完熟なつめはコンポートにしておやつに、煮物にと楽しみます。

9/28

くるみの日・胡桃・ナッツ・食養生

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30日はくるみの日だそうです。薬膳では昔から、ボケ防止に良いとされています。実際にくるみは必須脂肪酸のオメガ3を多く含み、脳を活性化させることが現代栄養学でもわかっています。手軽に摂取できるのも嬉しいですね。私はいつも小さめのフィグ(イチジク)や手製のナツメなどのドライフルーツと小袋に入れて持ち歩き、小腹が空いた時に口にしています。

鯛茶漬けのタレにもくるみが必需品です。小鍋に砕いたくるみ、カシューナッツ、ごまを、順に加えて焦げないように乾煎りして、すり鉢でよくすります。濃いめの麺つゆで好みの濃度にのばし、新鮮な鯛のお刺身をくぐらせる。熱々のご飯にのせ、おろしわさびや海苔を好みで添えてまずは、2口いただく。そのあとは、お茶か出汁を注げば贅沢な鯛茶漬けの出来上がりです。

くるみは血流の改善を促したり、コレステロール値を下げるなどの他、良質な脂質が腸を潤し便秘改善にも一役買います。1日にとると良い目安量は、7、8粒くらいのようです。

9/26

桃・桃仁・9月の果物

旬のフルーツ・果物・薬膳・桃・桃仁・井澤由美子・食養生・

新鮮な桃は手か布でうぶ毛をこすり取るように水洗いして、皮ごと食べるのだと山梨の友達から初めて聞いた時はびっくりしました。食べてみて納得、確かにその方が桃の香りも立って美味しい。写真の桃は熟しても実が硬いタイプ、切ると真っ白な果肉に紅色がなんとも艶やかです。

それまでは桃と言えば柔らかく完熟させてこそ美味しい果物と認識していたので、そのシャリシャリとした食感は新感覚でした。かたい桃はフルーツビネガーに漬けてピクルスにしても良いもので、生ハムやチーズに添えたり、魚介類とマリネしても美味。とは言え、芳醇な香りが立つ柔らかな桃を年に一度は思いっきり口にしたいので、少し冷やして薄皮を剥いてかぶりつく。体を冷やす果物が多い中で、温性の桃は胃腸が弱っている時にも安心して食べられる果物です。

以前、イギリスとスペインの市場をハシゴした時に見かけた桃は、身が締まっていて潰れたような楕円形。プラムと共に日本と同じような季節に出回っている様子、安くて美味しいので沢山買い込んではアパートメントで朝食とし、味比べをしていた想い出が有ります。桃はココナッツクリームとの相性が良いので、たっぷり添えたり、アイスにしたりと楽しみました。

桃の葉は薬効があり、日本の民間療法でもあせもや湿疹、神経痛などに効く入浴剤になっていますね。中国では邪気を払い長寿の果物とされ、つぼみや花は白桃花と呼ばれる生薬、むくみや無月経などに使用されます。種は桃仁と呼ばれ、血行を良くし、下腹部痛、更年期障害などに有効、漢方薬の桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)の主成分でもあります。

桃はデリケートな果物です。硬い時は紙袋に入れておくと塾生が早くなります。保存する時は、キッチンペーパーなどで一巻きしておくと持ちが良くなります。