井澤由美子の食薬ごはん Yumiko Izawa

食薬ごよみ

四季のサイクルに合わせて食すことが、身体を健やかに導く手助けをしてくれます。
季節の食材とその由来や歴史、食にまつわるお話をご紹介します。

9/18

落花生・ピーナッツ・ジーマミー豆腐作り方

DSC06364

落花生・ピーナッツは南米原産の豆科の植物です。千葉の農家さんから立派な掘り立てをいただきました。洗って土を落とし、40分ほど茹でた後、皮を剥くと雪のように真っ白でした。土の香りがほんのり漂います。
口にするとコクがあってミルキー感が出ますが、後味はすっきりしています。沖縄の秘密のレストランで食べたジーマミー(地豆)豆腐を思い出しました。あまりに美味しくて作り方を教わりましたよ。まず水1カップとピーナッツ200gをミキサーに入れ滑らかにし、ザルに布やキッチンペーパーを敷いて濾す(豆乳と絞りかすができる。絞りかすはクッキーや卯の花などに)。小鍋に水1カップ、くず70〜80g、きび砂糖小さじ1〜2、粗塩小さじ半を入れて混ぜる。こした豆乳を加えて中火にかけ、木べらで混ぜながらプルンとなるまでしっかり練ります。出来立てを器に入れ、わさびと生醤油でいただく、もっちりして滋味深いお味です。生姜を加えたポン酢やみたらしあんでも美味。

落花生は生薬では血を止める、肺を補うとされています。たんぱく質、ビタミン、ミネラルが豊富、バランスの良い油分は血管を強くするそうです。カロリーがやや高めなので1日15〜20粒までにすると良いですね。

9/14

たまり醤油・醤油・発酵調味料

たまり醤油・醤油・発酵調味料

凝縮された旨味のたまり醤油は、とても魅力的です。普段のお惣菜では、使いやすく香ばしい香りの濃口醤油を使いますが、ここぞという時にはたまり醤油が登場します。旨味が凝縮されていて、色が濃いのに醤油の中でも比較的塩分が低いのもいいですね
濃口醤油の原型はたまり醤油で、主原料が違います。濃口醤油は小麦と大豆、たまりは旨味の元となる大豆がほとんどです。水に浸した大豆を、蒸してつぶし味噌玉を作ります。表面に麹菌をまぶしてムロに入れると、数日で麹菌が成長して発熱するので、室内の温度調節をし、熱を逃がすように手でほぐすなどの工程があります。ここまでの管理によって良品になるかが決まるそうです。この後、木桶に入れ食塩水を加えて重石をのせる。底のたまった液体(たまり)を下から上に循環させる工程を繰り返した後、3年間熟成させます。もろみを布に入れ、圧搾してやっと完成です。愛知県武豊町には昔ながらの木桶で作る志し高い蔵が密集していて、蔵に入るとそれぞれ違う香りがします(写真は桶に乗せた重石)。
地元ではお刺身や照り焼き、お煎餅になくてはならない調味料。霜降りしたマグロの漬けタレに、麻婆豆腐や焼き飯、デミグラスソースにもひとたらしするとグーンと美味しさが増します。
醤油の油という字ですが、油は使っていませんね。醤から出るとろみの意味合いから使われるようになったそうです。

9/13

米油・こめ油・クレープの作り方

米油・こめ油・クレープの作り方・クレープ

米油は100%お米を原料にした植物性の油で、ビタミンEが豊富です。酸化しにくく揚げ物がカラリと揚がります。加熱時に油特有の匂いが発生しにくく油酔いしないのも嬉しい利点です。米油は鶏肉の唐揚げや春巻きなど普段の揚げ物にお勧めです。

米油はクセがなく、サラリと軽い性質なのでお菓子作りにも大活躍します。今日は、思い立ったらすぐに作れるクレープを焼きました、とても簡単です。ボウルに卵1個を溶き混ぜ、小麦粉と牛乳を各1カップ、塩ひとつまみ、甜菜糖(砂糖)大盛り大さじ1、米油大さじ1を加えてよく混ぜます。後は、米油を馴染ませたフライパンを熱して、一度濡れ布巾の上で冷まします。再び中弱火にかけて、クレープ生地を薄く広げて焼くだけです。上記の分量で大体4枚分作れます(この生地は30分〜1晩冷蔵庫で寝かせると、また美味しくなります。好みで米粉を加えても)。
湯煎にかけたチョコレート、シュガーバター、ジャムやコンポートの甘い系はもちろん、生地がしっかりしているのでハムや卵、チーズを包んでブリトー風にしても美味しくいただけます。

 

9/9

アールグレイ・ベルガモット・紅茶

紅茶・アールグレイ・お茶

圧倒的な紅茶派です。ニルギリ、アッサム、ダージリン、高尾紅茶(台湾)など、気分によっていろいろいただきますが、とりわけ心を落ち着かせてくれるアールグレイが好きしす。
香り成分のベルガモットはイタリアで多く生産されるダイダイのような果実(マンダリンとの交雑種)で、苦味が強いので食用には向かず、主に果皮を使用します。アールグレイはこのベルガモットの精油で香りをつけた紅茶です。主成分の酢酸リナリルやリナロールはラベンダーにも含まれる成分で、気持ちを落ち着かせる効果が高いのです。高貴とも言えるその香りが、気の巡りを良くし、神経を落ち着かせてリラックスさせてくれます。
少し古くなって香りが飛んでしまった紅茶に、乾燥させたベルガモットの皮を一緒に入れて、数日保存すると香りが移ります。私は国産ベルガモットを入手した際に、皮を乾燥させて保存してあったものを使いました。

9/8

葛・くず・薬膳

DSC04899

つるんとした喉越しのよい葛きりは涼しげ。まだまだ暑いので、甘味も良いですが、みょうがやしそ、ごまなどとお素麺のようにいただいても美味しいものです。

葛きり、葛餅など独特の食感が楽しい葛は、マメ科のつる植物で、根から採取されるデンプンが本葛粉となります。数年前に奈良県の本葛造りを見学してきました。本葛のお値段が少しよいのは、葛だけを材料にしているから(もちろん、効能も高い)。

極寒の頃に掘り起こして下処理し、何度も何度も水にさらし乾燥させるなど、とても手間がかかっています。くずの根といえば葛根湯ですね。風邪による症状で後頭部から首にかけての痛みを軽減する効能があるそうです。その他、葛はお腹の張りや胃腸の症状にも優しく作用します。

 

9/6

もやし・青森県大鰐温泉もやし

もやし・青森特産品・温泉もやし

飯田橋にある青森県のアンテナショップで見つけた特別長い豆もやしは「大鰐温泉もやし」。見るからに美味しそうです。聞けば根の部分も食べられるそうで、豆の部分を平貝の貝柱と一緒に、シンプルに塩味で炒め物にしてみました。旨味のあるシャッキリとした根と、柔らかい豆の風味が香る。芹の根の部分を食べますが、またそれとは違う風味で、他の野菜にはない旨味と食感があります。真ん中の繊細そうな白い部分はさっと茹でて揃えて切り、煎り酒でお浸しに。仕上げに庭の青ゆずの皮を少し削って香らせてみましたが、もやしとは思えない上品さです。

このもやしは、青森県中南地域に位置する大鰐町(おおわにまち)で作られる津軽伝統の冬野菜。約350年前から栽培され、温泉水のみで大事に育てられています。出荷される時は昔ながらの手作業の藁(わら)で束ねられるなど、伝統を受け継いでいます。
大鰐温泉の豆もやしは、門外不出の在来種「小八豆(こはちまめ)」の大豆から作られています。温泉水に含まれるミネラルやビタミン類、発芽させることで大豆の約2倍の栄養価があります。この美しいもやしに最近はまっています、蕎麦で育てられた蕎麦もやしもあるそうでこちらも興味をそそられます。

9/5

落葉きのこ・ハナイグチ・イクチ

落葉きのこ・きのこ

東京ではあまり見かけない落葉きのこは、落葉松(カラマツ)の木の下でよく見かけます。写真は数年前、北海道の美瑛で出会ったものです。表面はぬめりがあって、裏を見ると鮮やかな黄色で水分が多い感じがします。地元の方々に大変人気のある美味しいきのこで、見つけると皆さん楽しそうに採集していました。下処理として、汚れや虫を取る為に濃いめの塩水にしばらく漬けて除きます。

お味噌汁や鍋に入れたり、さっと湯がいて大根おろしでみぞれ和えにしたり、醤油漬けなどにして楽しむそう。肉厚なきのこなので、炒め物や揚げ物にしても美味しいです。採集して日にちが立つとなんと溶けてくる為、早めに調理します。
きのこはカロリーが低く、食物繊維が豊富、秋にたっぷり堪能したい味覚ですね。

 

9/4

モロヘイヤ・スパイス・夏バテ防止・薬膳カレー

モロヘイヤカレー・スパイスカレー・薬膳カレー・モロヘイヤ・王様の野菜・夏バテ防止

エジプト原産のモロヘイヤは、古代モロへーヤのスープを飲んで王様が病気から回復したとされ、その栄養価の高さから「王様の野菜」と呼ばれています。抗酸化作用が高く、豊富なビタミン類は葉野菜の中でもトップクラス。美肌効果もあるのでエイジングケアにもお勧め。かのクレオパトラも愛食していたそうです。
薬膳では、体内の水分を調節する(津液)を補う野菜とされています。今日のような猛暑日は特に消耗するので、疲労回復を助けるモロヘイヤはお薦めです。酢の物は夏バテ防止にぴったり。酢に含まれるクエン酸はエネルギー代謝を助け、疲れの元となる乳酸を分解します。同じく疲労回復効果のあるモロヘイヤと合わせると、さらに効果的。私はモロヘイヤの酢浸しをたっぷり作って冷蔵庫にストック。作り方は、簡単。モロヘイヤを茹でて水気をよく絞り、叩くように細かく刻んで粘りを出し、酢浸しにしてタッパーにたっぷり冷やしておきます。いただく時におろし生姜を添えます。心地よい辛味と香り、ひんやりした喉越で生き返ります。

もうひとつは名づけて「王様のモロヘイヤスパイスカレー」。唐辛子、にんにく、香りスパイス(カルダモンやコリアンダーシード、クミンなど)を40〜80度の間で油でゆっくり炒めて香りに華を咲かせます。スパイスは脂溶性のもが多いので油と合わせると良いのです。後はチキン、水、モロヘイヤを加え、好みの味に整えて煮込めば出来上がりです。

栄養価の高さと語源により陽が盛んで疲労する日には特にお勧めの野菜となります。

9/1

枝豆・えだまめ・山椒・お浸し・おつまみ

枝豆・お浸し・えだまめ・おつまみ

江戸料理に枝豆の東煮という料理があります。枝豆をさやごと醤油やみりん、唐辛子などと甘辛く煮て冷たく冷やしたもの、がなんとも粋。中身をだして出汁に漬けた出汁漬けは、透明な冷やし鉢に入れるとさらに涼しげで涼を呼ぶ。東北地方の郷土料理のずんだ餅も枝豆で作りますね、砂糖やもち米と合わさって滋養にもとてもよいものです。

枝豆は肝機能の働きを助けアルコールを分解するので、ビールの相棒的な存在。理にかなっていますね。ビタミンB1、B2を含む大豆にはないビタミンCとカロテンンも豊富。

ご存知の方も多いと思いますが、枝豆は大豆が未成熟の内に収穫したもの。私は菜園を借りていて、豆の種まきから味噌作りを毎年楽しんでます。

枝豆時期は枝豆おつまみをほとんど毎日作ります。今日は昆布だしと山椒の実の枝豆お浸しをキンと冷やして!

8/30

茄子(なす)・なすび・味噌炒め・夏野菜

なす・茄子・旬野菜・焼きなす

なすの原産地はインドと考えられています。16世紀のフランスでは有毒だとみなされて観賞用だったとか。なすを眺めていたなんて何だか面白いですね。
日本には平安時代の8世紀頃にお目見えしました。花も紫色で可愛いですが、採りたては鋭いトゲがあって刺さると痛いのでご注意を。なすは種類には、関東によく出回る千両なすを始め、長なす、水ます、米ます、地域特有のブランドなす、最近では美しい明るい紫色の丸Nasuなど多様に出回っています、海外にも青なすや白なすがありますが、卵のようなその形からエッグプラントとも呼ばれています。
いつものみそ炒めの仕上げに、ほんの少々コーヒーを加える、騙されたと思って試してみて下さい(なすのお料理にはできるだけ体を温める生姜、にんにく、ねぎなどを加えるとよいですね)。
ちなみに私がこの世で一番好きななすのお料理は、今はなき、新橋鮎正さんの鮎のうるかなす、島根本店(美加登家さん)の子持ち鮎はこれからが旬です。