井澤由美子の食薬ごはん Yumiko Izawa

食薬ごよみ

四季のサイクルに合わせて食すことが、身体を健やかに導く手助けをしてくれます。
季節の食材とその由来や歴史、食にまつわるお話をご紹介します。

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ピーマン・赤ピーマン・夏野菜

食養生・井澤由美子・ピーマン・夏野菜・赤ピーマン・きょうの料理・

夏の緑黄色野菜の王様、ピーマン。唐辛子を意味するフランス語のピマンが語源だそうです。ビタミンCとカロテンが豊富で、皮膚を健やかに保ち、疲労回復を助けます。紫外線などのダメージが気になるこの季節には、特に食べたい野菜ですね。ピーマンのビタミンCは加熱しても壊れにくい特徴があり、たんぱく質と合わせるとコラーゲンの生成に役立ち、肌を潤す手助けをします。豊富なカロテンは油と調理すると体への吸収率が高まりますよ。
旬のピーマンはフレッシュで香りも良いですね。我が家のベランダ菜園でもたわわに実ります。たねやヘタも食べられ、特にヘタの部分がクシュっとして美味しいんですよ。手でギュッと押しつぶして丸ごと調理、ヘラで押しつけながらごま油で焼いて、酒、醤油、みりんで落としブタをして煮込む「ピーマンの丸煮」や、おみそ汁、バーベキューなどいろいろな料理に展開できます。ちなみに、少し苦味のある緑のピーマンを時間をかけて完熟させたものが赤ピーマンで、甘みがましてビタミン類やカロテンの含有量が高くなります。
本日NHK「きょうの料理」8月号では、鯵のなめろうに薬味代わりに加え、同じくP29ではガーリック炒めにたっぷり使用しています

8/4

きゅうり・胡瓜・お漬け物

食養生・井澤由美子・まいにち食薬養生帖・糠漬け・胡瓜・きゅうり・キュウリ・食養生・薬膳・夏野菜

昨日花が咲いたと思ったら、直ぐに大きくなっているきゅうり。成分は約80%以上が水分で、カロリーが低く、夏にふさわしい薬効を持っています。身体の余分な熱を冷まし、喉の渇きを止め、利尿作用が高い。鎮静作用や美白効果もあるので、日焼けや火傷の時はきゅうりでパックをして、ほてりを鎮める民間療法も伝わっていますね。この時期、ベランダに実るきゅうりでせっせと作るのは、ぬか漬け。2日半漬けてから水で洗って半分に切り、冷蔵庫で冷やして置く。ポリポリとかじると疲れがスッと抜けます。
長野県の農家のおばあちゃんに教わったポリパリ食感のきゅうり漬けもよく作ります。醤油、酢、みりん(砂糖)、赤唐辛子を火にかけて漬け汁を作り、きゅうりを入れて煮る。コツはきゅうりを入れて煮立ったら火からおろし、鍋ごと氷水につけて冷やす。これを4〜5回繰り返す。食感も美味しさのひとつです。長野県では漬物は、お茶請けに登場させるもの。もちろんごはんのお供やお酒のアテにも最適で、暑い日には特に美味しく感じます。
詳しい作り方は「体がよろこぶお漬け物(誠文堂新光社)」に掲載しています。宜しかったらご覧ください。

8/3

トマトの麻婆豆腐・トマト・美肌レシピ

美肌レシピ・トマト・夏野菜・トマトの麻婆豆腐

暑い日にいただく冷たいトマトは喉を潤し、甘みと酸味が心地よく美味しく感じます。ベランダ菜園のトマトや唐辛子も完熟しています。刺激的なものが食べたくなったので、今日はトマトの麻婆豆腐を作ります。唐辛子に含まれるカプサイシンが発汗作用をもたらし、ダイエットにもよい一品です。絹ごし豆腐1丁300gはさいの目に切り、80度くらいの湯で温めておく。フライパンにごま油、ひき肉などに(またはこま切れ肉)100gを入れて脂がでるまで炒める。豆板醤大さじ1を加え、刻んだ香味野菜適宜(ねぎ、生姜、にんにく)を炒める。酒、醤油、オイスターソース各大さじ1、甜麺醤(味噌と砂糖でも)少々を馴染ませたら、水150cc、鶏がらスープの素大さじ1、水溶き片栗粉を混ぜながら加える。とろみが出たら豆腐とトマトを加えて数分間煮て、好みで山椒やラー油で風味をつけて出来上がり。
トマトは食欲増進効果も期待できる夏野菜。赤い色素成分のリコピンと豚肉のビタミンB1、にんにく、生姜で美肌や疲労回復も効果的に上がります

8/2

土用の丑の日・うなぎ・鰻・スタミナ

うな茶・うなぎ・鰻・土用の丑の日・unagi

2020年の夏の土用の丑の日(どようのうしのひ)は2回あり、本日は2回目の土用の丑の日にあたります。土用とは陰陽五行説と暦を合わせたもので、春夏秋冬の季節が始まる18日間の期間を指し、今日は立秋前の土用です。
今年は長雨で8月に入ってやっと梅雨明けしましたね。夏バテしないように滋養をつけたいものです。うなぎは食べると確かに元気になりますが、心理的イメージもあって、心も元気になる気がします。
昔から薬味として山椒を添えてあるのは、美味しさと香りのためですが、胸焼けを防ぐ効能があるからです。
うなぎはビタミンAが豊富、皮膚や粘膜を健康に保ち、ドライアイや疲れ目などの改善にも効果が期待出来ます。
スーパーなどで購入した時は、フライパンに入れて酒少々を全体にふり、フタをして蒸し焼きにすると臭みが取れてふっくらします。シメにはおろしたてのわさびをたっぷり添え、冷たい緑茶を注いだうな茶漬けもこれまたオツ。

7/31

雨季のお弁当・湿(水滞)

お弁当・雨季のお弁当・べんとう

しとしと降る雨。私は嫌いではありませんが、湿気が多いのは何かと難点ですね。お弁当なども傷みやすくなるので、煮物や茹で野菜にはすりごま、おかか、のりなどを合わせて汁気をなくし、味つけは心持ち濃いめにし、抗菌作用のあるレモンや酢、生姜を多用しましょう。梅干しやわさび、からし、唐辛子、マスタード、カレー粉、豆板醤、こしょう、柚子こしょうなどを活用するのもいいですね。ごはんはしっかり冷まし、しそふりかけや塩昆布、梅干しなどを全体に散らせばさらに効果的です。前の日のお惣菜を詰める時は必ず再加熱して下さい。
写真のお弁当は、鮭南蛮酢漬け、菊花の酢物、濃いめに味付けした江戸風卵焼きがおかず。梅干しと昆布で炊き込んだ梅干しごはんを詰めたお弁当です。
身体にも湿(しつ)が溜まりやすい方は、重だるさ、むくみ、頭痛や食欲不振などの症状が現れる事も。薬膳ではそんな時、利尿作用がある小豆、スイカ、きゅうり、とうもろこしを食し、ハトムギ茶や緑茶を飲みます。また、水分代謝を高める辛味香辛料の生姜やねぎ、よい香りで気が巡るハーブや柑橘類、シナモンもお勧めです。余分な水分を体から排出するように心がけると、雨季を楽に過ごせる手助けになります。

7/30

海胆・雲丹・うに・ウニ・天売島(てうりとう)

うに・ウニ・雲丹・天売島・北海道

ウニの種類はムラサキウニ、アカウニ、バフンウニなどがあり、約2500年前から食べられているそう。葉酸や鉄分が豊富で、肌を潤す効果もあります。アリストテレス(古代ギリシャの哲学者)がランタンのようだと言ったことから、ウニの口器は「アリストテレスのランタン(提灯)」と呼ばれるようになったとか。
写真はある年に旅した天売島で堪能したウニ。コクのある甘いウニをいただいた後は、宿のお父さん(栄丸の漁師さん)おすすめの焼きウニにする。合わせるのは、食べた後のツブ貝に日本酒を注いだ会の出汁がきいた熱燗を合わせると最高。青くて広い空と「映画天空の城ラピュタ」のような小道に広がる草花、コバルトブルーの透き通った海など、感動ばかりの天売島。

7/29

苦瓜・にがうり・ゴーヤー・美肌効果

ゴーヤ・苦瓜・夏野菜・ツルレイシ・美肌

ゴーヤーや長命草、ナーベラーなど、沖縄の代表野菜はほとんどが薬膳。暑さに負けないよう、体の余分な熱をとったり、利水効果があったり、体をケアする食材が多いですね。中でもゴーヤーは特に上半身の熱を下に降ろし、クールダウンさせる効能があります。頭がすっきりして、イライラや憂鬱が抑えられ、またビタミンCが豊富なので疲労回復や風邪予防にも良いですね。
お隣の鹿児島県与論島の農家のおばぁは、ゴーヤーの種とワタを水でクツクツ煮て、お茶にしていました。薬効がありそうです。ゴーヤーは薄切りにして塩もみし、ざっと水で洗って絞り常備しておくと、酢の物や和え物にパパッと完成。
ゴーヤーのビタミンCは加熱しても損失が少なく、油との相性もいい。豚肉などたんぱく質と一緒に摂取すると、元気になれるだけでなくコラーゲンの生成をたすけ、美肌効果が高まります。

7/28

カシス・クロスグリ・ブラックカラント

濃紫のカシス。カシスはフランス語でグロイゼイエ・ノワール。英語ではブラックカラントといい、日本名は黒すぐり(または黒ふさすぐり)。スピリッツと合わせたカシスリキュールや、ジャムになっているものがお馴染みですね。カシスに含まれる色素成分(カシスアントシアニン)は、ピントフリーズ現象(眼精疲労からくる視界がぼやけた現象、眼のかすみ)を改善する効能があるそうです。カシスはビタミンC、ビタミンE、ビタミンA、亜鉛、鉄分、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルもバランスよく含んでいます。
抗酸化力が高くアンチエイジングをサポートし、女性ホルモンのバランスも整えてくれるカシス。国産は今が旬です、私は北海道の道の駅で見かけました。

7/27

生ハム・ハム・世界3大ハム

生ハム・ハム・スペイン

前菜や料理に欠かせない旨味の強いハムは、ワインに合う至福のつまみです。世界3大ハムには、プロシュート、ハモンセラーノ、金華ハムがあります。
イタリアパルマ地方で生産される柔らかく食べやすい生ハムのプロシュートは、パルマ公爵の王冠の刻印が押されます。
スペイン産のハモンセラーノは白豚の後ろ足が原料で、塩だけで熟成させたもの。ハモンはハム、セラーノは山地の意味を持ちます。ちなみにハモンイベリコは黒豚のハムでさらに長期熟成させて作る高級品で、その中でもランクが3つに分けられています。そして中国が誇る金華ハムは脂肪が少ない良質な赤身の金華豚が使われ、その熟成された塩気や旨味は頂湯(スープ)には欠かせません。
日本では塩漬けにした豚肉を丁寧に長期熟成さたものもありますが、一般的には調味料で味付けしたハムが多く出回っており、気軽に楽しめます。熟成期間が無い(または旨味がほどほどで価格は安め)。旨味はほどほど価格が安めで気軽に使えるにがよい点です。
写真は、昨年スペイン旅の折に生ハム専門店でつまんだ切りたてのハム。暑い昼さがりに冷えたビールやカヴァと堪能しました。ふんわりした口あたりと、程よい脂と塩気が絶妙。常温なのも美味しさのポイントでした。イタリアワインにはイタリアのハム、スペインハムにはスペインワインで楽しむ。慣れたら、熟成期間や産地を知って食べ分け、合うお酒をチョイスするとステキです。

7/26

胡椒・ブラックペッパー・こしょう飯

インドが原産地のこしょうは中国から伝わり、古くから日本でも食されてきた辛味調味料。江戸時代には既に、うどんやごはんに使用されていました。食をそそる辛味と香りの『こしょう飯』は食欲が落ちるこの季節にピッタリ。ごはんに挽きたて、あるいは潰したてのこしょうをふり、お出汁をかけたものはお出汁をかけたものはサラサラと胃に収まる。冷やしあんかけにし、小椀に盛るとおもてなしの〆に最適。お好みで古漬け、梅干し、おろし生姜、刻み薬味などを添えても。上質のねぎま鍋のスープをしめのご飯にかけ、潰したてのこしょうを振ると最高。大好きだった大塚にある江戸料理の名店なべ家さんを想い出します。
こしょうは胃腸の調子を整え、消化不良を促します。辛味成分が代謝を上げるので、脂肪が燃焼されやすくなります。最近では生の塩漬けこしょうが手に入るようになり、料理の幅がますます広がりました。