井澤由美子の食薬ごはん Yumiko Izawa

食薬ごよみ

四季のサイクルに合わせて食すことが、身体を健やかに導く手助けをしてくれます。
季節の食材とその由来や歴史、食にまつわるお話をご紹介します。

8/2

土用の丑の日・うなぎ・鰻・スタミナ

うな茶・うなぎ・鰻・土用の丑の日・unagi

2020年の夏の土用の丑の日(どようのうしのひ)は2回あり、本日は2回目の土用の丑の日にあたります。土用とは陰陽五行説と暦を合わせたもので、春夏秋冬の季節が始まる18日間の期間を指し、今日は立秋前の土用です。
今年は長雨で8月に入ってやっと梅雨明けしましたね。夏バテしないように滋養をつけたいものです。うなぎは食べると確かに元気になりますが、心理的イメージもあって、心も元気になる気がします。
昔から薬味として山椒を添えてあるのは、美味しさと香りのためですが、胸焼けを防ぐ効能があるからです。
うなぎはビタミンAが豊富、皮膚や粘膜を健康に保ち、ドライアイや疲れ目などの改善にも効果が期待出来ます。
スーパーなどで購入した時は、フライパンに入れて酒少々を全体にふり、フタをして蒸し焼きにすると臭みが取れてふっくらします。シメにはおろしたてのわさびをたっぷり添え、冷たい緑茶を注いだうな茶漬けもこれまたオツ。

7/31

雨季のお弁当・湿(水滞)

お弁当・雨季のお弁当・べんとう

しとしと降る雨。私は嫌いではありませんが、湿気が多いのは何かと難点ですね。お弁当なども傷みやすくなるので、煮物や茹で野菜にはすりごま、おかか、のりなどを合わせて汁気をなくし、味つけは心持ち濃いめにし、抗菌作用のあるレモンや酢、生姜を多用しましょう。梅干しやわさび、からし、唐辛子、マスタード、カレー粉、豆板醤、こしょう、柚子こしょうなどを活用するのもいいですね。ごはんはしっかり冷まし、しそふりかけや塩昆布、梅干しなどを全体に散らせばさらに効果的です。前の日のお惣菜を詰める時は必ず再加熱して下さい。
写真のお弁当は、鮭南蛮酢漬け、菊花の酢物、濃いめに味付けした江戸風卵焼きがおかず。梅干しと昆布で炊き込んだ梅干しごはんを詰めたお弁当です。
身体にも湿(しつ)が溜まりやすい方は、重だるさ、むくみ、頭痛や食欲不振などの症状が現れる事も。薬膳ではそんな時、利尿作用がある小豆、スイカ、きゅうり、とうもろこしを食し、ハトムギ茶や緑茶を飲みます。また、水分代謝を高める辛味香辛料の生姜やねぎ、よい香りで気が巡るハーブや柑橘類、シナモンもお勧めです。余分な水分を体から排出するように心がけると、雨季を楽に過ごせる手助けになります。

7/30

海胆・雲丹・うに・ウニ・天売島(てうりとう)

うに・ウニ・雲丹・天売島・北海道

ウニの種類はムラサキウニ、アカウニ、バフンウニなどがあり、約2500年前から食べられているそう。葉酸や鉄分が豊富で、肌を潤す効果もあります。アリストテレス(古代ギリシャの哲学者)がランタンのようだと言ったことから、ウニの口器は「アリストテレスのランタン(提灯)」と呼ばれるようになったとか。
写真はある年に旅した天売島で堪能したウニ。コクのある甘いウニをいただいた後は、宿のお父さん(栄丸の漁師さん)おすすめの焼きウニにする。合わせるのは、食べた後のツブ貝に日本酒を注いだ会の出汁がきいた熱燗を合わせると最高。青くて広い空と「映画天空の城ラピュタ」のような小道に広がる草花、コバルトブルーの透き通った海など、感動ばかりの天売島。

7/29

苦瓜・にがうり・ゴーヤー・美肌効果

ゴーヤ・苦瓜・夏野菜・ツルレイシ・美肌

ゴーヤーや長命草、ナーベラーなど、沖縄の代表野菜はほとんどが薬膳。暑さに負けないよう、体の余分な熱をとったり、利水効果があったり、体をケアする食材が多いですね。中でもゴーヤーは特に上半身の熱を下に降ろし、クールダウンさせる効能があります。頭がすっきりして、イライラや憂鬱が抑えられ、またビタミンCが豊富なので疲労回復や風邪予防にも良いですね。
お隣の鹿児島県与論島の農家のおばぁは、ゴーヤーの種とワタを水でクツクツ煮て、お茶にしていました。薬効がありそうです。ゴーヤーは薄切りにして塩もみし、ざっと水で洗って絞り常備しておくと、酢の物や和え物にパパッと完成。
ゴーヤーのビタミンCは加熱しても損失が少なく、油との相性もいい。豚肉などたんぱく質と一緒に摂取すると、元気になれるだけでなくコラーゲンの生成をたすけ、美肌効果が高まります。

7/28

カシス・クロスグリ・ブラックカラント

濃紫のカシス。カシスはフランス語でグロイゼイエ・ノワール。英語ではブラックカラントといい、日本名は黒すぐり(または黒ふさすぐり)。スピリッツと合わせたカシスリキュールや、ジャムになっているものがお馴染みですね。カシスに含まれる色素成分(カシスアントシアニン)は、ピントフリーズ現象(眼精疲労からくる視界がぼやけた現象、眼のかすみ)を改善する効能があるそうです。カシスはビタミンC、ビタミンE、ビタミンA、亜鉛、鉄分、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルもバランスよく含んでいます。
抗酸化力が高くアンチエイジングをサポートし、女性ホルモンのバランスも整えてくれるカシス。国産は今が旬です、私は北海道の道の駅で見かけました。

7/27

生ハム・ハム・世界3大ハム

生ハム・ハム・スペイン

前菜や料理に欠かせない旨味の強いハムは、ワインに合う至福のつまみです。世界3大ハムには、プロシュート、ハモンセラーノ、金華ハムがあります。
イタリアパルマ地方で生産される柔らかく食べやすい生ハムのプロシュートは、パルマ公爵の王冠の刻印が押されます。
スペイン産のハモンセラーノは白豚の後ろ足が原料で、塩だけで熟成させたもの。ハモンはハム、セラーノは山地の意味を持ちます。ちなみにハモンイベリコは黒豚のハムでさらに長期熟成させて作る高級品で、その中でもランクが3つに分けられています。そして中国が誇る金華ハムは脂肪が少ない良質な赤身の金華豚が使われ、その熟成された塩気や旨味は頂湯(スープ)には欠かせません。
日本では塩漬けにした豚肉を丁寧に長期熟成さたものもありますが、一般的には調味料で味付けしたハムが多く出回っており、気軽に楽しめます。熟成期間が無い(または旨味がほどほどで価格は安め)。旨味はほどほど価格が安めで気軽に使えるにがよい点です。
写真は、昨年スペイン旅の折に生ハム専門店でつまんだ切りたてのハム。暑い昼さがりに冷えたビールやカヴァと堪能しました。ふんわりした口あたりと、程よい脂と塩気が絶妙。常温なのも美味しさのポイントでした。イタリアワインにはイタリアのハム、スペインハムにはスペインワインで楽しむ。慣れたら、熟成期間や産地を知って食べ分け、合うお酒をチョイスするとステキです。

7/26

胡椒・ブラックペッパー・こしょう飯

インドが原産地のこしょうは中国から伝わり、古くから日本でも食されてきた辛味調味料。江戸時代には既に、うどんやごはんに使用されていました。食をそそる辛味と香りの『こしょう飯』は食欲が落ちるこの季節にピッタリ。ごはんに挽きたて、あるいは潰したてのこしょうをふり、お出汁をかけたものはお出汁をかけたものはサラサラと胃に収まる。冷やしあんかけにし、小椀に盛るとおもてなしの〆に最適。お好みで古漬け、梅干し、おろし生姜、刻み薬味などを添えても。上質のねぎま鍋のスープをしめのご飯にかけ、潰したてのこしょうを振ると最高。大好きだった大塚にある江戸料理の名店なべ家さんを想い出します。
こしょうは胃腸の調子を整え、消化不良を促します。辛味成分が代謝を上げるので、脂肪が燃焼されやすくなります。最近では生の塩漬けこしょうが手に入るようになり、料理の幅がますます広がりました。

7/25

無花果・いちじく・蒸しいちじく

古代ローマでは「不老不死の果実」とされていたいちじく。いちじくは和食でも繊細な白和えなどいろいろな食べ方がありますが、是非一度お試しいただきたい一品をご紹介します。完熟いちじくが手に入ったら皮をむいて器に入れて蒸し、粗熱をとって冷蔵庫で蒸し汁ごと冷やしておきます。次にタレを作ります、指で砕いたカシューナッツ3、4個を乾煎りし、香りが出たらごま大さじ1を一緒に煎ります。熱いうちにすり鉢ですって、メープルシロップ、醤油各同量、酢少々で伸ばしながら好みの味に整えます。これをいちじくにかけます。香ばしく甘みのあるとろりとしたタレがいちじくに絡まってなんとも美味。冷たいことも美味しさのポイントです。ビールよりスパークリングか白ワイン、日本酒がよく合います。
繊維が豊富ないちじくとごまを合わせるとグンと便通効果が上がりますね。薬膳ではいちじくは体の余分な熱をとり、喉の腫れをおさえます。更年期の女性によい効能もたくさんあり、母乳の出もよくすると言われています。

7/22

バジル・ハーブ・ジェノベーゼ・バジルペースト

井澤由美子・まいにち直訳養生帖・薬膳・食養生・バジル・スパイス・ハーブ

バジルを目の前にすると深呼吸したくなります。鎮静作用、強壮作用があるスパイシーな香りはイライラを鎮めてくれますよ。今日は綺麗なグリーン色のジェノベーゼペーストの作り方をご紹介します。バジル、パセリ、イタリアンパセリ等好みで合わせて40gほど使います。かたい軸は落とし、熱湯に塩を加えてさっと茹でる。氷の入った水に放してしっかり冷やして、水気を絞る(色褪せ防止の作業)ボウルに松の実やくるみ30g、潰したにんにく半かけ、粗塩、こしょう、茹で各汁少々、すりおろしたパルミジャーノ(粉チーズ)半カップ、オリーブオイルを半カップ弱を加えてハンドミキサーで攪拌し、水気を絞ったハーブを入れてさらに攪拌します。好みで生のハーブを少々を足しても。清潔な密封容器で冷蔵保存します。冷蔵保存も可能ですが、時間とともに色が少しくすみます、冷凍するとあざやかに保てます。
色鮮やかなジェノベーゼは、パスタはもちろん、茹で野菜やサンドイッチのソースに肉や魚にかけるなど多様。スープに落とすと、お皿の上がパッと美しく映えてコクのある清涼感が宿ります。

7/21

鰻(うなぎ)・土用の丑の日・食養生

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今日は夏の土用の丑の日。今年は2回あって、今日は一の丑の日で、二の丑の日は8月2日です。
うなぎは昔は白焼きにして白焼きにして、塩梅よく伸ばした味噌やお酢などをつけていたようです。醤油、みりん、酒を使って煮詰めたタレをぬる蒲焼が主流になったのは、江戸時代中期だそう。関東風の蒲焼は背開きで蒸し焼きにするのでふんわり柔らかくタレが濃いめ、関西風は腹開きで蒸さないのでパリッとしています。
うなぎはビタミンA、B群が豊富で疲れた時時にお勧めの滋養強壮食。質な天然のうなぎは、食べごたえがあって力強い旨味と後味に余韻がある感じ。香ばしく焼けた少し厚めの皮が美味しいなぁと思います。食べやすい安定価格の養殖はお重などによいですね。黒もち米を醤油麹で味を付けて炊き、うなぎをのせて蒸すと味のついたもっちりとしたおこわ。ふっくらしたうなぎがよく合います。養生にもなるうなぎおこわは、山椒などをあしらうとおもてなしにもぴったりです