井澤由美子の食薬ごはん Yumiko Izawa

食薬ごよみ

四季のサイクルに合わせて食すことが、身体を健やかに導く手助けをしてくれます。
季節の食材とその由来や歴史、食にまつわるお話をご紹介します。

9/9

アールグレイ・ベルガモット・紅茶

紅茶・アールグレイ・お茶

圧倒的な紅茶派です。ニルギリ、アッサム、ダージリン、高尾紅茶(台湾)など、気分によっていろいろいただきますが、とりわけ心を落ち着かせてくれるアールグレイが好きしす。
香り成分のベルガモットはイタリアで多く生産されるダイダイのような果実(マンダリンとの交雑種)で、苦味が強いので食用には向かず、主に果皮を使用します。アールグレイはこのベルガモットの精油で香りをつけた紅茶です。主成分の酢酸リナリルやリナロールはラベンダーにも含まれる成分で、気持ちを落ち着かせる効果が高いのです。高貴とも言えるその香りが、気の巡りを良くし、神経を落ち着かせてリラックスさせてくれます。
少し古くなって香りが飛んでしまった紅茶に、乾燥させたベルガモットの皮を一緒に入れて、数日保存すると香りが移ります。私は国産ベルガモットを入手した際に、皮を乾燥させて保存してあったものを使いました。

9/8

葛・くず・薬膳

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つるんとした喉越しのよい葛きりは涼しげ。まだまだ暑いので、甘味も良いですが、みょうがやしそ、ごまなどとお素麺のようにいただいても美味しいものです。

葛きり、葛餅など独特の食感が楽しい葛は、マメ科のつる植物で、根から採取されるデンプンが本葛粉となります。数年前に奈良県の本葛造りを見学してきました。本葛のお値段が少しよいのは、葛だけを材料にしているから(もちろん、効能も高い)。

極寒の頃に掘り起こして下処理し、何度も何度も水にさらし乾燥させるなど、とても手間がかかっています。くずの根といえば葛根湯ですね。風邪による症状で後頭部から首にかけての痛みを軽減する効能があるそうです。その他、葛はお腹の張りや胃腸の症状にも優しく作用します。

 

9/6

もやし・青森県大鰐温泉もやし

もやし・青森特産品・温泉もやし

飯田橋にある青森県のアンテナショップで見つけた特別長い豆もやしは「大鰐温泉もやし」。見るからに美味しそうです。聞けば根の部分も食べられるそうで、豆の部分を平貝の貝柱と一緒に、シンプルに塩味で炒め物にしてみました。旨味のあるシャッキリとした根と、柔らかい豆の風味が香る。芹の根の部分を食べますが、またそれとは違う風味で、他の野菜にはない旨味と食感があります。真ん中の繊細そうな白い部分はさっと茹でて揃えて切り、煎り酒でお浸しに。仕上げに庭の青ゆずの皮を少し削って香らせてみましたが、もやしとは思えない上品さです。

このもやしは、青森県中南地域に位置する大鰐町(おおわにまち)で作られる津軽伝統の冬野菜。約350年前から栽培され、温泉水のみで大事に育てられています。出荷される時は昔ながらの手作業の藁(わら)で束ねられるなど、伝統を受け継いでいます。
大鰐温泉の豆もやしは、門外不出の在来種「小八豆(こはちまめ)」の大豆から作られています。温泉水に含まれるミネラルやビタミン類、発芽させることで大豆の約2倍の栄養価があります。この美しいもやしに最近はまっています、蕎麦で育てられた蕎麦もやしもあるそうでこちらも興味をそそられます。

9/5

落葉きのこ・ハナイグチ・イクチ

落葉きのこ・きのこ

東京ではあまり見かけない落葉きのこは、落葉松(カラマツ)の木の下でよく見かけます。写真は数年前、北海道の美瑛で出会ったものです。表面はぬめりがあって、裏を見ると鮮やかな黄色で水分が多い感じがします。地元の方々に大変人気のある美味しいきのこで、見つけると皆さん楽しそうに採集していました。下処理として、汚れや虫を取る為に濃いめの塩水にしばらく漬けて除きます。

お味噌汁や鍋に入れたり、さっと湯がいて大根おろしでみぞれ和えにしたり、醤油漬けなどにして楽しむそう。肉厚なきのこなので、炒め物や揚げ物にしても美味しいです。採集して日にちが立つとなんと溶けてくる為、早めに調理します。
きのこはカロリーが低く、食物繊維が豊富、秋にたっぷり堪能したい味覚ですね。

 

9/4

モロヘイヤ・スパイス・夏バテ防止・薬膳カレー

モロヘイヤカレー・スパイスカレー・薬膳カレー・モロヘイヤ・王様の野菜・夏バテ防止

エジプト原産のモロヘイヤは、古代モロへーヤのスープを飲んで王様が病気から回復したとされ、その栄養価の高さから「王様の野菜」と呼ばれています。抗酸化作用が高く、豊富なビタミン類は葉野菜の中でもトップクラス。美肌効果もあるのでエイジングケアにもお勧め。かのクレオパトラも愛食していたそうです。
薬膳では、体内の水分を調節する(津液)を補う野菜とされています。今日のような猛暑日は特に消耗するので、疲労回復を助けるモロヘイヤはお薦めです。酢の物は夏バテ防止にぴったり。酢に含まれるクエン酸はエネルギー代謝を助け、疲れの元となる乳酸を分解します。同じく疲労回復効果のあるモロヘイヤと合わせると、さらに効果的。私はモロヘイヤの酢浸しをたっぷり作って冷蔵庫にストック。作り方は、簡単。モロヘイヤを茹でて水気をよく絞り、叩くように細かく刻んで粘りを出し、酢浸しにしてタッパーにたっぷり冷やしておきます。いただく時におろし生姜を添えます。心地よい辛味と香り、ひんやりした喉越で生き返ります。

もうひとつは名づけて「王様のモロヘイヤスパイスカレー」。唐辛子、にんにく、香りスパイス(カルダモンやコリアンダーシード、クミンなど)を40〜80度の間で油でゆっくり炒めて香りに華を咲かせます。スパイスは脂溶性のもが多いので油と合わせると良いのです。後はチキン、水、モロヘイヤを加え、好みの味に整えて煮込めば出来上がりです。

栄養価の高さと語源により陽が盛んで疲労する日には特にお勧めの野菜となります。

9/1

枝豆・えだまめ・山椒・お浸し・おつまみ

枝豆・お浸し・えだまめ・おつまみ

江戸料理に枝豆の東煮という料理があります。枝豆をさやごと醤油やみりん、唐辛子などと甘辛く煮て冷たく冷やしたもの、がなんとも粋。中身をだして出汁に漬けた出汁漬けは、透明な冷やし鉢に入れるとさらに涼しげで涼を呼ぶ。東北地方の郷土料理のずんだ餅も枝豆で作りますね、砂糖やもち米と合わさって滋養にもとてもよいものです。

枝豆は肝機能の働きを助けアルコールを分解するので、ビールの相棒的な存在。理にかなっていますね。ビタミンB1、B2を含む大豆にはないビタミンCとカロテンンも豊富。

ご存知の方も多いと思いますが、枝豆は大豆が未成熟の内に収穫したもの。私は菜園を借りていて、豆の種まきから味噌作りを毎年楽しんでます。

枝豆時期は枝豆おつまみをほとんど毎日作ります。今日は昆布だしと山椒の実の枝豆お浸しをキンと冷やして!

8/30

茄子(なす)・なすび・味噌炒め・夏野菜

なす・茄子・旬野菜・焼きなす

なすの原産地はインドと考えられています。16世紀のフランスでは有毒だとみなされて観賞用だったとか。なすを眺めていたなんて何だか面白いですね。
日本には平安時代の8世紀頃にお目見えしました。花も紫色で可愛いですが、採りたては鋭いトゲがあって刺さると痛いのでご注意を。なすは種類には、関東によく出回る千両なすを始め、長なす、水ます、米ます、地域特有のブランドなす、最近では美しい明るい紫色の丸Nasuなど多様に出回っています、海外にも青なすや白なすがありますが、卵のようなその形からエッグプラントとも呼ばれています。
いつものみそ炒めの仕上げに、ほんの少々コーヒーを加える、騙されたと思って試してみて下さい(なすのお料理にはできるだけ体を温める生姜、にんにく、ねぎなどを加えるとよいですね)。
ちなみに私がこの世で一番好きななすのお料理は、今はなき、新橋鮎正さんの鮎のうるかなす、島根本店(美加登家さん)の子持ち鮎はこれからが旬です。

8/29

糠漬け・ぬか漬け・免疫力・植物性乳酸菌・発酵食

ぬか漬け・発酵食・冷やしスープ・夏野菜・ギャバ・漬物・糠漬け

暑い時こそぬか漬け。
あせをかくのでぬか漬けの塩分が美味しく感じます。酸味も心地よく、ひんやり冷えた漬物は格別ですね。
腸には免疫細胞の6〜7割が集中しています。免疫力向上には腸内環境を整えることが大事だとされています。日本の伝統食のぬか漬けは胃酸にも強い植物性乳酸菌がたっぷりで腸に良い食材です。また糠漬けに含まれるギャバには、神経の興奮を抑える効果が期待できるので、夕食時にいただくと安眠出来ると言われています。
ギャバは発芽玄米、納豆、トマト、きのこなどに多く含まれています。
写真は、お手軽水キムチです。発酵が進んで酸味が出たうまみのあるぬか漬けを利用して作ります。昆布だし(濃縮タイプ)を水で薄め、切ったぬか漬け(きゅうりやかぶ、パプリカ)を入れ、好みの調味料で味をととのえると、涼を呼ぶおいしいスープに。腸内環境を改善し、体を元気にしてくれますよ。
腸内の健康状態は体の軸。ヒポクラテス(古代ギリシャの医師)も「すべての病気は腸から始まる」と言っています。腸内環境はアトピーや湿疹などのアレルギー、自己免疫力疾患、感染症、慢性消化器疾患、うつ病、認知症にも関連すると考えられており、第2の脳とも言われます。

8/27

豚肉(ぶたにく)・疲労回復・酢豚

豚肉・酢豚・疲労回復・黒酢

疲れた時や暑い季節は豚肉に限ります。豚肉のビタミンB1は体に効率よく摂取でき、にんにくや玉ねぎなどと組み合わせると疲労回復効果がさらに高まります。調味に酢を使った料理も、クエン酸が疲労回復をサポートするので、夏に食べたくなりますね。特に、パイナップル入りの酢豚は優秀メニュー。豚肉、玉ねぎ、酢を使い、疲労回復が期待できるからだけではありません。ポイントはパイナップル! パイナップルに含まれるたんぱく質を分解する酵素の働きで、豚肉からポークペプチドという物質が作られます。このポークペプチドには、血液中のコレステロールを下げ、脂肪を燃焼する効果があります。酢豚にパイナップルは理にかなっているのです。生のパイナップルが手に入らないときは、ジュースでもOK!(パパイアやキウイにも同様の酵素が含まれます)
酢豚のタレのレシピ(2人分)です。水1カップ、鶏がらスープの素大さじ1、きび砂糖大さじ2、黒酢大さじ3、片栗粉大さじ2、醤油大さじ2、オイスターソース大さじ1半を混ぜながら加熱し、とろみをつける。おろし生姜と醤油で下味をつけて揚げ焼きにした豚肉と旬の野菜、パイナップルを合わせるだけです。

8/26

酢橘・すだち・スダチ・疲労回復・気の巡り

酢橘・すだち・疲労回復・気の巡り・柑橘

青いみかん、青りんご、無花果、オリーブの実など、実りものが生ると嬉しくなります。葉付きの野菜や果物は、飾るだけでもとてもいい雰囲気を演出してくれます。今の時期は庭の酢橘がたわわです。脳がよい香りと爽やかな酸味を想像するのか、その形を見るだけでリフレッシュするような気がします。特に小粒の酢橘は、柑橘の中でもビタミンCの富含有量が多く、クエン酸が疲れをとり、香り成分のリモネンがストレスを軽減してくれます。
今朝は炊きたてのごはんに塩をパラリとふりかけ、もぎたての酢橘をギュッと絞った「酢橘飯」にしました。朝から爽快です。しらすやたらこ、すりごま、しそ、海苔をのせたのっけ小丼、添えた椀ものにも酢橘をひとたらし。皮も削って散らします。
ちなみに、酢橘の名の由来は、食酢として使われていたことからだそう。キリリとしまるその酸味と香りを旬の食材にさっと絞るだけで格別な料理となります。私は、これから出回る秋刀魚の塩焼き、白身のお刺身、土瓶蒸し、梨や柿の他、蕎麦やうどんにもたくさん搾ります。