井澤由美子の食薬ごはん Yumiko Izawa

食薬ごよみ

四季のサイクルに合わせて食すことが、身体を健やかに導く手助けをしてくれます。
季節の食材とその由来や歴史、食にまつわるお話をご紹介します。

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葱・下仁田ねぎ・葱白・食養生

葱・下仁田ねぎ・食養生・ネギ・薬膳・漢方

立春が過ぎ、梅の蕾もふっくらして来ましたが寒さが一番募る頃。

ねぎは風邪の特効薬。体を温め、寒気から体や喉を守ります。特に美味しい季節なので寒い日には沢山召しがって下さい。ねぎの白い部分は葱白(そうはく)という生薬でもあり、体を温める薬効が高く、咳や痰、喉や関節の痛みなどの症状にも効き目があります。炎症をおさえて痛みや熱を取りのぞく効果があるとされ、昔は焼いて喉に巻くなどの民間療法がありました。

ねぎは辛味のある野菜ですが、加熱調理をすると柔らかくなり、甘みが出て食べやすくなります。生姜やニンニク、唐辛子、山椒、シナモンなどを更にプラスすると効果が高まり、豚肉やラム肉と合わせると気力、体力を養います。

下仁田ねぎに、好きな食べ方があります。丸のまま魚焼きグリルで玉に返しながら全体が真っ黒になるまで焼く。外皮を剥くと、とろんと甘みの立つ白肌が顔を出します、シンプルですが、塩とオリーブオイルでいただくと最高ですよ。葱の辛味成分の硫化アリルは疲労を回復したり、血液サラサラ効果が期待できます。細切りにして短時間水にさらしてサラダやお刺身のツマなどにして楽しんで下さい。

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菜の花・菜花(なばな)

井澤由美子・食薬ごはん・薬膳・春野菜・貧血予防・抗酸化作用・菜の花・春野菜・菜花・風邪予防・免疫力

店先でチラホラ菜の花を見かけるようになりました。春の訪れを感じさせじる菜の花は、ほんのり苦みがある花野菜です。ビタミンC、カロテン、カルシウムが多いので風邪予防にもお勧めです。鉄分も豊富、貧血気味の方や、産後の肥立ちが悪い方にも良さそうです。

購入するときは、花が咲き過ぎていない、緑色が濃いものを選び、茎の部分を1cmほど切ってたっぷりの水に短時間、放してあげましょう。背伸びをするようにイキイキしてきますよ。水分をたっぷり吸収すると、火を通した時も熱伝導が良くなりシャキッと美味しく仕上がります。風味を楽しめるおひたしや辛子和えはおすすめ。さらにオリーブオイルやごま油等と合わせると、カロテンの吸収が良くなります。食べやすく切った菜の花をフライパンに入れ、塩とオイルをふって蒸し煮にすれば、手軽な上に栄養価も逃しません。

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立春搾り・立春・日本酒

井澤由美子・養生ごはん・美人・二十四節気・恵方巻き・節分・立春・海苔巻き・太巻き・食養生

豆まきをした翌朝の立春は、旧暦のお正月にあたる春の始まりとされる日。雪やみぞれが降ったりと一年でもっとも寒い頃ですが、庭の梅の蕾はふっくらし、早咲きの梅は既に満開です。寒さ厳しい中にも日射しものびて、春の訪れを感じるこの頃。

立春搾りを頂きました。この日本酒は、節分の夜からもろみを一晩中搾り続ける生原酒のことで、言葉の響きも美しくて素敵です。搾り上がりが2月4日と決まっているので、微妙な調整、完璧な管理が必要だそうです。また、搾り上がったらすぐに瓶詰め出荷をしなければならならず、蔵人さん始め、酒屋さんは夜中から徹夜での作業です。思いを馳せながら、古来は1年の始まりとも考えられた立春に、除災招福(じょさいしょうふく)を祈ります。適量の日本酒は、いただくと心が清々とします。アミノ酸が含まれているので肌を美しくし、血行の巡りも改善。胃を労るようにお水と一緒に楽しんで下さい、この水を和らぎ水(やわらぎみず)と呼びます。

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節分・恵方・大豆・二十四節気

炒り豆・乾燥大豆・大豆・節分・二十四節気

今日は2022年の節分。恵方は北北西でやや北の微北です。恵方とは歳徳神(としとくじん)と呼ばれる縁起の良い神様がいらっしゃる方向。今年は十干が壬(みずのえ)、十二支が虎なので千支は壬虎(みずのえとら)の方角で、これは毎年変わります。
節分とは季節の変わり目を指し、二十四節気の立春、立夏、立秋、立冬の事。この4つの前日全てが節分ですが、その中でも一年の始まりの春の節目が重要視され、邪気を払う風習が中国から伝わり豆まきなどが行われるようになりました。

豆まきは、鬼は外(邪気を払い)、福は内(幸運を呼び込む)と声を立てて厄除けをする風習、鬼がやってくる夜に行います。大人ばかりの我が家では、心ばかりに楽しんだ後の福豆(豆まきの炒り大豆)を、食べやすくおこわにして福茶(福豆3粒・塩昆布・梅干し・お湯か好みのお茶)を添えて食卓を囲みます。米2合は洗って30分浸水させ、ザルに上げる。鍋に洗った米、酒大さじ2、粗塩小さじ1、米油少々を加えてひと混ぜし、昆布一切れ、餅一枚、豆まきの炒り大豆を半カップほど入れて普通の水分で炊きます。その他に、炒り大豆が少し余ったら糠床に入れて余分な水分を吸収させます。ふっくら戻った糠漬けの豆も美味しくいただけるので、一石二鳥です。五穀の一つである大豆は、畑のお肉と呼ばれるほどタンパク質が豊富。鬼を退治する他に、血液をサラサにし、体脂肪の減少、便秘改善、筋力をアップし、骨も丈夫にします。

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春菊・菊菜・風邪予防

春菊・菊菜・風邪予防・薬膳・食養生・ひじき

春菊が美味しい季節ですね。薬膳では漢方薬としても用いられるほど、薬効のある野菜です。野菜の中でもカロテン、ビタミンC、A、K、ミネラル、食物繊維が豊富で食べる風邪薬とも呼ばれています。

すき焼きや鍋などに春菊がよく入っていますが、その独特の香りと風味が胃をすっきりさせてくれる感覚を持ちます。実際に、胃腸の働きを促し、胃もたれを改善させる効果が期待できます。香成分のペリルアルデヒドは、イライラを鎮める作用もあります。その他に、のぼせなどを覚える、なかなか痰が切れない方にも良いそうです。

春菊の栄養を効率的に体に摂取できる簡単なサラダをご紹介します。フライパンに4cmに切った春菊の茎の部分を入れ、あればひじきやワカメ、好みで戻した干し椎茸などを入れます。オイルと塩を全体に適宜ふり、蒸し煮にしてボウルに移す。葉の部分とさっくりあえて、旬の柑橘をたっぷり絞ります。油を使うことでカロテンの吸収を良くし、硬い茎も食べやすくなります。水溶性の栄養は生食が一番、茎以外はそのままいただきます。

その他に、春菊のクルミ和えもお勧めです。春菊は硬い部分を落とし、熱湯で茎の方から塩茹でしてさっと冷水にとってザルに上げます。軽く絞って醤油適宜を全体にふり(醤油洗い)、ぎゅっと絞って3cm幅に切ります。半すりにしたクルミやごま、蜂蜜、醤油少々を混ぜたペーストと、醤油洗いした春菊を和えます。下ゆでした野菜を醤油洗いするとグンと美味しくなりますよ、和食の調理法です。美味しい上に美肌効果も上がり、便秘解消にも良い和え物です。ついでに、薬膳での胡桃はボケ防止に良いとされています、美肌にも有効なオメガ3などを含みます。

 

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苺・strawberry

井澤由美子・薬膳:漢方・喉の渇き・苺・いちご・イチゴ・肌養生・風邪予防

冬から出回りますが、春先は香り豊かで美味しいですね。いちごはビタミンCが豊富で肌養生や風邪予防にも良く、コラーゲンの生成にも役立ちます。いちごは喉の渇きを和らげ、体にこもった余分な熱を下げたい時にもお勧めの果物です。5粒程度食べると1日分のビタミンが得られるそうです。

できるだけヘタが緑でピンと張り、実に傷がないものを購入します。ヘタを落とすと切り口からビタミンCが流出するので、洗う時はヘタつきのままでさっと洗うようにしましょう。
毎年作るいちごのビネガーシロップは姪っ子達にも大人気。ミルクを加えると少し固まって、ヨーグルトのような食感になります。
いちごに含まれるアントシアニンは、乳製品の脂質と結び付くと吸収率が高まります。子供の頃にはお砂糖と牛乳が私の中でも名コンビでした、昔ながらの組み合わせには意味があるんですね。

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金柑・ドライキンカン・風邪予防

・風邪予防・食養生・きんかん・金柑・喉の痛み・キンカン・柑橘類・薬膳・

柑橘類が豊富に出回っていますが、中でも金柑属の個別分類になる(皮ごと食せる)金柑がとても美味しく感じます。ヘタが緑で艶がよく、より赤みの強いものを購入し、よく洗ったら皮ごと存分に楽しみます。喉にもよい金柑は甘露煮にしたり、コンポートにして保存。きんかんを2、3分下茹でしてアクを抜きます。蜂蜜に漬けるだけでも良いですが、鍋に移してきんかん分量の半量くらいのきび砂糖とかぶるくらいの水と、少々の酢か白ワインを加えトロミが出るまで煮詰めます。煮物や酢豚などに入れると味に奥行きがでて、鶏肉や鴨肉などともよく合います。お菓子には、タルトやソルベになどにすると爽やかです。
金柑の皮に含まれるヘスペリジンやビタミンCは風邪予防やアレルギー対策に有効、香りには気の巡りをよくする効能があり、ストレスを緩和し心を落ち着かせます。
写真はセミドライ金柑、皮ごと薄切りにして3日間干すだけ。セミドライなら、サラダに散らす、ケーキの飾りにすると可愛い仕上がりに。しっかり乾燥させたものは、長期保存ができ、お茶や飲み物に加えるとフレーバーティーになり、甘みがほんのり移ります。

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サトウキビ・黒糖・食養生

食養生・蒸しパン・黒糖・きび砂糖・サトウキビ・黒糖蒸しパン・薬膳

サトウキビの絞り汁を時間をかけて煮詰めたものが黒糖(黒砂糖)。奄美大島と加計呂麻島に行って、旅をしながら気に入りのお店を巡っては、手造りの黒糖を購入し味比べして楽しんでいたのがこの時期。まだぬくもりのあるカケラを口に入れると天然由来の嫌味ではない微かな酸味や苦味が奥の方に感じられて、美味しいものでした。

黒糖はカルシウムも多く、鉄分、ミネラルが豊富です。様々な種類の砂糖の中でも薬膳での黒糖は、体を温める効能がとりわけ高いと言われています。黒糖のソイラテは相乗効果で女性に嬉しい効果がありますし、黒糖と干し生姜の入った蒸しパンやパンケーキも滋養があってお勧めです。

サトウキビは刈り取ったら、すぐに汁を搾り手作業で加工されます。黒糖作りはサトウキビの収穫期と一緒でなければできません、12月から3月終わり頃までが旬。ハブにも挑みながら大変な労力が必要な黒糖作り、貴重な甘味です。

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ニラ・滋養強壮

ニラ・ニラ玉・薬膳・食養生・漢方・ニラの効能・ニラレシピ

食欲増進、疲労回復に良いとされるニラは、最も調理しやすい野菜ですね。ニラレバやニラと豚肉炒めなどはシンプルですが、ニラのアリシン、カロテン、肉のビタミンB1などが合わさって相乗効果のある組み合わせです。ニラの効能を使った昔ながらの民間療法も沢山あります、嘔吐やゲップにお困りの方は、ニラをさっと茹でて絞ったものと、生姜をおろして絞ったものを牛乳で溶いて飲む。腰痛や肩こりには、熱燗を呑みながらニラのお浸しなどをお酒のお供にいただくなど。

薬膳では、ニラには止血効果もあり、鼻血、不正出血などに良いとされています。ですが作用が強いので胃腸の弱い方、小さなお子さんは少し控えめになさって下さい、ニラはお腹のホウキと呼ばれるほど便通効果が高いので便秘気味の方には良いもの。それからお腹が弱い方は蜂蜜と併用すると下すこともあるようなので気をつけます。

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白菜・クリームシチュー・発酵食

井澤由美子・シチュー・白菜・養生三宝・薬膳・畑仕事・冬野菜・ハクサイ

温かくヘルシーで、食べ応えのあるシチューはいかがでしょう。まず3、4枚分の白菜の軸と緑の葉の部分を切り分けざく切りに、にんにく1かけ分はスライス、鶏もも肉1枚分を食べやすく切る。フライパンにオリーブオイルかごま油大さじ1を熱し、にんにくと鶏肉を炒める。色が変わったら白菜の白い部分だけを加えてしんなりするまで炒め、塩、胡椒する。豆乳2カップと白みそ(みそ)大さじ1〜2を入れて煮立て、残りの白菜を加え中弱火で3〜5分ほど煮込む。白菜の軸は炒めると、とろりとして甘みが増すのですが、この一手間でグンとコクがでて美味しくなります。最後に大さじ1の葛粉を少々の水で溶いて加え、とろみをつける。鶏肉の代わりに牡蠣を加えると精神を安定させる効果が高まり、更年期障害のイライラや落ち込みを改善します。その他白菜は胃腸を整え、お酒の解毒効果があるので二日酔いやむくみに有効、朝のお味噌汁などにもいいですね。

ビタミンCや繊維が多く便通も良くしますよ、発酵食品の味噌と同じ大豆の豆乳を合わせると、特に女性の健康維持にかかせないイソフラボン(味噌にも豆乳にも多く含まれている)のダブル効果で、骨量もふやす一皿になります。