井澤由美子の食薬ごはん Yumiko Izawa

食薬ごよみ

四季のサイクルに合わせて食すことが、身体を健やかに導く手助けをしてくれます。
季節の食材とその由来や歴史、食にまつわるお話をご紹介します。

10/1

棗・大棗・たいそう・生薬・老化防止

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日本の棗(ナツメ)は9月〜10月頃に実る小粒の実。若い時は青りんごのような風味で、赤く完熟すると柔らか甘くなります。中国では庭にナツメの木がある家庭が多く、1日3個食べると老化防止に良いとされ、ポピュラーに口にするそうです。台湾のなつめは大きくて食べ応えがあり、日本でもフレッシュなものが手に入ることも。

ナツメは昔から珍重される五果(季・杏・栗・桃・棗)の一つで、乾燥させたものは大棗(たいそう)と呼ばれ、中医学では頻繁に使われる生薬。気を補い、血流を増やし、精神を安定させる効能があります。風邪の引き始めの頭痛や首の根の痛みなどに効く葛根湯(かっこんとう)にも配合されています。

ナツメ茶を作る時には、そのままではななくぜひ半分にちぎって煮出して下さい、相性の良いクコや紅茶とブレンドしても。毎年手摘みのナツメを農家さんに送って頂きます。蒸して乾燥させて空き瓶に保存したものはスープ(参鶏湯)やお茶に。茶ザラメとブランデーに漬けるナツメ酒には相性の良いスパイスを足して、完熟なつめはコンポートにしておやつに、煮物にと楽しみます。

9/25

白木耳・美容食・美肌食・秋の食養生

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朝夕はだいぶ涼しくなり、道行くとイチョウの木に銀杏がたわわです、秋ですね。
肌の乾燥が気になり始めるのもこの頃。肺も潤す美容食として人気の白きくらげは、料理やデザートに大活躍します。私のお勧めの下処理は、たっぷりの湯でとろみがでるまで約1時間半ほどの下茹で。ふるふると柔らかく、木耳の効能を高めます。多めに茹でて小分け冷凍すればいつでも楽しめますよ。

咳や痰を抑える杏仁とミルクや生クリームと合わせたデザートはおもてなしにも。レモンシロップと合わせてスッキリとした仕上がりにすると、酸味と甘みの組み合わせなのでこの季節には特に養生になります。

その他、肌に良いスープとして、コラーゲンと旨味の素となる骨つき鶏(塩麹をもみこむ)と一緒にさらに煮込むと、最強のツヤ肌に。生成を助けるビタミンCの多いじゃがいもやカリフラワーを加えるとより効果的です。その際、体を温め滋養のあるものもプラス。生姜のスライス、松の実、クコの実、ナツメ、玉ねぎや長ねぎなどを加えてゆっくり煮込み、薄味に仕上げます。胃腸を整え、冷えも改善する丁子(クローブ)をアクセントに加えても良いでしょう。器によそい粗塩を添え、好みで黒こしょうや山椒をふって全体を引き締めると美味。

9/12

みょうが・甘酢つけ・疲労回復

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秋みょうが美味しい季節ですね。よく見ると色味が少し違いますよ、みずみずしく小ぶりのサイズを目にしたら、早々天つゆや香り塩を仕込みます。薄く衣をつけた揚げたてのみょうがを一口でほうばると、香りが鼻を抜け、しゃきしゃきとした食感が何とも心地よいものです。初秋の醍醐味ですね、暑い日ならおそうめんの付け合せにも最適です。

みょうがの香り成分には発汗作用があるので血行を良くします、消化もよくする効能も期待できます。茗荷は色も美しいので、何かとお料理のアクセントになりますね。3〜4月頃が旬の茗荷竹は若い頃の茎で、天麩羅に美味。7月ごろの早(わせ)茗荷は比較的小ぶりで、八月に入ると赤く丸みを帯び、9月に入るとさらにみずみずしく香りの良い秋みょうがもお目見えします。茗荷をスライサーでたっぷり削り、冷水にさっと放す。薄切りにした新蓮根と合わせる妙は、香りや食感が大変に美味しい組み合わせになります。

まだ暑いので甘酢もいいですね。みょうがと蓮根をさっと茹で、熱い内に甘酢に漬ければ鮮やかに発色し、日持ちするピクルスになります。これを刻んでご飯に混ぜれば即席のお寿司がすぐに作れます。この甘酢に焼き鮭やじゃこをくぐらせてご飯に混ぜると、さっぱりとした旨味で、食欲がない日にも箸が進みます。

夏の暑さがまだ少し残るが秋の気配がする頃には夏後の疲労が出やすい時期。甘みを少し加えた酸味は津液を潤し、香りを含めた効能が疲労回復を潤す手助けをします。

9/9

9月9日 五節句 重腸の節句

菊の節句・重陽・井澤由美子・大人のひな祭り・食養生・日本の行事・慣わし

昔から季節の境目を節句としていますが、今日は奇数節句の5節句の一つ「重陽の節句」(ちょうようのせっく)です。雛祭りや端午の節句子供の日より、目立たぬ節句ですが、邪気を払うと言われており、菊の節句でもあります。菊の時期と少しずれているので廃れてしまったようですが、大人の雛祭りとも呼ばれ、菊の着せ綿で肌を磨くと若返りに良いとされたり、健康長寿を願って菊酒や菊茶を楽しむ風習も有ります。菊は汚れを払う花とされていることからも頷けますね。薬膳での菊は眼精疲労をケアする生薬とされ、クコを加えた菊茶は飲む目薬とも言われ、ドライアイにも有効です。

重陽の節句には菊の他に、栗のお菓子や栗ご飯などもいただくようで、少し早いですが此方も一緒に楽しみたいと思います。

9/3

イカ・イカ刺し・鳥賊骨

イカ・烏賊・お刺身・薬膳・疲労回復・美人・かわいい・

お刺身、パスタ、煮物、フライなど幅広く調理出来る食べやすいイカ。日本人は世界でも有数のイカ好きです。漢方では烏賊の甲は鳥賊骨(うぞくこつ)と言う生薬で、月経異常や胃腸薬などにも使用されます。低エネルギーでたんぱく質を多く含み、豊富なタウリンは、中性脂肪や血中コレステロールの増加を抑えます。タウリンを効果的に摂取したい場合は、生食かさっと火を通す程度にします。

先日の出張で、イカ刺しを堪能しました。鮮度の良いイカを朝食べる風習があるようで細切りになったイカがホテルの朝食や定食屋さんで気軽に食べる事ができます。夜に行った居酒屋さんでは、生きているイカをさばいてくれます。コリコリとした身や新鮮な内臓、足などはまだ動いていましたがフライにして下さいました。そのほかにウニや貝類、北海道ならではの魚や珍味はどれも厳選素材、お酒が進む一夜となりました。

イカや白身の刺身には醤油を使わずに美味しい粗塩をパラリとふって、甘みを引き出す食べ方も私は好きです。9月に入り、庭の酢橘がちょうど良い大きさになってきました。キュッと絞って酸味と香りをまとった塩イカは絶品です。もしもイカの足が余ったら刻んでハンバーグに入れてみて下さい、食感よく美味しくなります。もしもスーパーなどで肉厚のイカを見かけたら、餅米を詰めてふっくらもっちりのイカ飯をぜひ!

 

9/2

オクラ・島オクラ

オクラ・おくら・夏野菜・井澤由美子・料理家・発酵食・健康ごはん

以前旅した与論島の農家のお母さんに、オクラは生で刻んで食すと教えていただいて以来、オクラの表情を見て調理法を変えています。島のオクラをよく見ると産毛が無くてツルリとしています。一般に関東に出回るオクラより、旬に出回る沖縄、鹿児島のオクラは大きいのに柔らかく、生食にも向いているようです。角オクラ、丸オクラ、八丈オクラ、白オクラ、赤オクラ、ヘルシエなど、形や色の違いなど様々。平城グリーンや島の唄・ダビテ・レディーフィンガーなど、特徴を表した名前も楽しげです。オクラは塩でもんで、熱湯で(中の種が出ないくらい)少し長めに茹でると、強い粘りと甘みが引き出されて美味です。塩茹でしただけのシンプル調理がベスト、粗塩とオリーブオイルやおろし生姜、わさび醤油などでシンプルに堪能します。

オクラはカロテンやカルシウム、食物繊維を多く含み、疲労回復・滋養強壮も期待できるので夏の疲れが重なるこの時期に特に良いですね。粘り気のある野菜はそのまま炭火やグリルで香ばしく焼くのもお勧めです。そういえば、島根県の道の駅で買った黄色いオクラの花を酢の物にし、角寿司(島根県の郷土料理)を作った事を思い出しました。オクラの黄色い花にも粘りがありました。。

8/26

スパイス・生薬・食欲増進

免疫力・薬味・スパイス・生薬・香辛料・井澤由美子・美肌・腸活・料理家・ハーブ

スパイスとは大概が、木の根っこ、樹皮、花、種、果実などの植物から採取されています。料理やお茶などに折り重なる複雑な風味や辛味、色合いをつけ、肉や魚の臭みなども消臭します。薬味・生薬・スパイスなど、国や地域で呼び名は変わりますが、古来より世界中の人々のカラダや心の不調を治してきた薬です。食欲増進・消化促進効果が高いもの、食品を傷みから守る抗菌作用や防腐効果にも優れたものなども多様です。

料理以外の用途では、例えば中国の楊貴妃は口臭予防に噛んでいましたし、ネパールでは歯痛止めに、ヨーロッパではオレンジに刺してポプリに、日本ではタンスに入れて虫除け剤として活躍していました。このような事も含め、身近なスパイスや薬味の薬効を感じながら日常的に見直してみると楽しいですね。

スパイスはお茶やデザートにも是非活用して下さい。桃の美味しい時期ですが、桃のコンポートにほんの少しカルダモンを忍ばせると、桃との好相性に驚かされます。マガジンハウス「クロワッサン」の薬味とスパイスの特集では、沢山のスパイスをご紹介しています

8/19

酢・フルーツビネガー

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残暑お見舞い申し上げます。

お酢の効果は偉大です。酢には様々な健康効果がありますが、残暑などの重なりて疲労がピークに達するこの頃には特にお勧めです。腸活や体を温める効果もありますね。フルーツを合わせると気になる晩夏の症状にも効果的。果物は全般的にビタミンやカリウム、食物繊維を多く含み、疲れやむくみ、便秘などの改善にも有効なので、合わせると相乗効果が生まれます。

フルーツ酢がバテ予防におすすめの理由が3つあります。1、フルーツのビタミンCと酢のクエン酸で疲労回復を促進させる。2、酢とフルーツの腸活パワーと酢の血流を促す効果で冷え知らず。3、フルーツと食物繊維と酢の消化吸収を高める効果で食欲不振を改善などです。

実は夏が一番体を冷やす時期、エアコンや冷たい飲み物で体内外を冷やしがちです。結果、血流が悪くなり胃腸の機能が低下すなど、冷えは様々な不調を呼び込みます。胃が活発に動く温度は体温より2度ほど上です、消化吸収を促す為に冷たすぎるものは避けましょう。出来るだけ常温でいただき、血流を促して養生して下さい。体を温める酢を多用しながら、頭寒足熱(足は冷やさず頭は涼しく)で健やかに乗り切って下さい。

7/25

フレッシュハーブティー・自然療法

井澤由美子・自然治癒力・整える・ハーブ・パセリ・ミント・香り

ローズマリー、ゼラニウム、ホーリーバジル、レモンバーベナなどのハーブ達が元気に育っています。スクスクと育つ丈夫なハーブはベランダ菜園でも気軽です、中でもローズマリーは特に元気に育ちやすい。古来から脳の活性化や血液循環も促進させる効能が期待でき、料理にも使いやすいので重宝しています。切ったジャガ芋と一緒に揚げるだけで、よそいきのポテトフライに。

フレッシュな香りを楽しめるハーブティーは簡単なストレスケアになります。つみたてを洗ってティーポットにたっぷりと入れ、熱湯を注いだら出来上がり。5分ほどそのまま蒸らせば、清々しい豊かな香りがフワリと立ち上がります。この蒸気はハーブの成分や効能も吸い込めるので心身からリフレッシュできますね。この出がらしのハーブを足湯に入れてもさっぱりとします。ハーブを詰む前に香りを嗅いで、今日の気分のハーブを多めに詰んで楽しみます。

ブレンドのハーブティーはそれぞれの効能プラス、胃腸を整える効果が期待できるので、消化機能の低下が気になる時にもお勧めですよ。

7/19

うめ・梅干し・梅仕事・夏の養生

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日本では「梅はその日の何のがれ」と昔からの言い伝えがありますね。梅干しを食べると、その日1日の災難から逃れられると言う意味合いですが、薬のなかった時代に下痢や便秘、疲労回復、生物などの殺菌効果や、旅先での病よけなどの意味合いも含まれていたと思います。子供の頃、高熱が出ると母におでこに梅干しを貼られるのが嫌で逃げ回っていましたが、翌朝目を覚ますと梅干しは私の熱を吸ってカラカラに乾いておでこからポロリとはがれていたものでした。「食・水・血」の三毒を断つとも言われる梅干し、色々な効果効能があることを昔の人々は感覚的によく知っていたのですね。

7月に地方に行くと、農家さんの庭先にずらっと並んだ梅干しを見かけます。夏の風物詩でもある梅の土用干しの景観はそれは壮観、もっとも日本らしい風景です。7月30日は梅干しの日だそうで、梅で有名な和歌山県みなべ町の農園さんが設定されました、7(なん)が30(去る)の語呂合わせだと伺いました。

汗で塩分が排出されていくので、暑い日の塩梅の良い梅干しは美味しく感じます。合わせてクエン酸で疲労もしっかり回復。白米や玄米、バターを加えた夏野菜のピラフなどを炊く時にも梅干しを、ポトンと一粒落とします。出汁をとる時に種ごと加えるのもこの時期の防腐効果や養生になります。

お酒に鰹節と梅干しを加えて煮詰めた煎り酒は、醤油が出来る前の江戸調味料でした。旨味とさっぱりとした酸味と塩味が心地よく夏の食材によくあいます。