井澤由美子の食薬ごはん Yumiko Izawa

食薬ごよみ

四季のサイクルに合わせて食すことが、身体を健やかに導く手助けをしてくれます。
季節の食材とその由来や歴史、食にまつわるお話をご紹介します。

6/12

ニューサマーオレンジ・日向夏(ひゅうがなつ)・柑橘

レモンイエローのビタミンカラー、日向夏は高知県、宮崎県、静岡県などで生産される柑橘類の一つ。穏やかな酸味が食べやすく、爽やかな香りが心地いい。特徴は、りんごを剥くように外側の黄色い皮だけを剥いて、白皮(アルベド)部分と実を一緒に食せること。1㎝位の輪切りにしたり、真ん中に集まっている種をよけて、斜めそぎ切りにしても。旅先の農家のお父さんは塩一つまみをふりかけて食べるのが最高!と言ってましたが、こんなに鮮やかな黄色で、食べやすい柑橘類は大人になってから口に出来るようになりました。みずみずしさと柚子のような香り、果肉のジューシーさに感動します。地方によって、土佐小夏、小夏みかん、ニューサマーオレンジと呼ばれることも。クエン酸を含み、体内の酸性物質を減少させて疲れをとります。

6/10

山椒(さんしょう)・実山椒

写真

店先に山椒の実、小梅、青梅、らっきょうが並びワクワクしています。うかうかしていると、時期を逃してしまうので早起きして保存食作りに勤しみます。山椒醤油、山椒の実の塩漬け、山椒オイルを手始めに作りますが、この時期だけの淀みのない鮮烈な青い香りと辛味を逃さず、ギュッと詰める為に毎年試行錯誤を楽しみながら繰り返しています。山椒の実は沸騰させた湯に塩少々を入れ3分ほど茹で、氷水に1時間ほどさらす。枝から実をとって水気をしっかりふき(ここで冷凍しても)、清潔な密封容器に山椒をいれ、醤油をかぶるくらいに注ぐ。山椒オイルは下処理した山椒に米油、ごま油、オリーブオイルなど好みのものをそそぐ(冷暗所か冷蔵庫で保存)。シンプルで思いもよらぬ食べ方を発見できた時は特に嬉しい。青々した山椒のチリソースを作って、エビやホタテに絡めると眼にも舌にも鮮烈です。山椒は消化不良や胃腸の調子を整え、身体の冷えに効果があります。何よりその高貴な香りに胸がスッとします

6/7

クルミ・マカデミアナッツ・アーモンド・美肌・ダイエット

小腹が空いた時に食事の約30分くらい前に5〜10粒のナッツ類をよく噛んで食べると、食事後の血統値の上昇が緩やかになります。私はクルミ好きなので、いつも持ち歩いています、中医学ではボケ防止にも有効とされ、栄養学的にもクルミに良質な脂に効能があることが判っています。ナッツの中でもGI値が低く、悪玉コレストロールを減少させるオメガ3脂肪酸をとても多く含みます。
マカダミアナッツは風味が美味しい、含まれるパルミトレイン酸は血管を強くし、肌や髪をキレイにします。アーモンはビタミンEが豊富、美女のアンチエイジング、ダイエットに最適なのは有名ですね。

6/5

発酵食・漬物(つけもの)・糠漬け(ぬかつけ)

糠漬けつくりは発酵しやすいこの季節におすすめです、本格的な梅作業の前に楽しまれてはいかがでしょう。精米したての生糠(ぬか)500gを用意します。鍋に水2カップ強の水と粗塩70gを入れ溶かし冷ます、ホーローなどの密封容器にぬかを入れ、冷ました塩水を少ずつ柔らかく(ぬかどこらしく)なるまで加えてよく手で馴染ませる。赤唐辛子2本、角切り昆布3㎝角2枚、あれば実山椒や生姜、粉辛子、干し椎茸などを適宜好みで加え混ぜる。捨て漬け野菜を毎日変えて5、6日して熟れたらきゅうり等、軽く塩もみしてから本漬けします。朝晩かき混ぜるのが理想ですが、最低でも1日1回は混ぜる、容器のフチについたぬかはキレイにふきとり、表面は平らにならして保存するとカビが生えにくくなります。管理が難しい時は発酵してから冷蔵庫保存します。乳酸菌やギャバがたっぷりの糠漬け、免疫力を上げイライラも防ぐ効果が期待できます

6/2

甘海老(あまえび)

写真

北海道が約7割の水揚げをほこる甘えび。北国赤海老又は南蛮海老とも呼ばれ、南蛮は赤い唐辛子や葱などの料理を南蛮料理と呼ぶことからの由来。春から夏にかけて青緑色の卵をつけるのですが、後味に微かな酸味を感じます。甘えびは、アスタキサンチンやビタミンEなども豊富なので美容にも◎。刺身や揚げ物、贅沢に塩辛などもいいですが、紹興酒に漬けたものも絶品です。とれたてはプリプリ、次の日はねっとり感がでて甘みを増します。余市にある燻製屋さんで初めて丸ごと甘エビの燻製を口にしたのはかれこれ10年以上前、殻ごと楽しめます。写真は北海道天売島に船上する前、甘エビ漁が盛んな周辺の食堂にて。

5/26

アロエ

アロエの語源は苦いと言う意味の(アロッホ)アラビア語から来ています。昔からの民間療法で火傷や蜂刺され、胃腸薬などに使用されてきました。医者いらずと言われるアロエは古代エジプトの壁画にも書かれており、当時から薬として珍重されていたようです。
これからの季節、海辺や山で日焼けした肌にも有効、火照りを沈めるのはもちろん、くすみ改善や保湿効果もあるそうです。実際に炎天下の奄美大島で日焼けしすぎてしまった時、宿の方が庭のアロエを下さり、切り口を塗ったら見事に鎮静し、修復も早かったように思います(念の為、酷過ぎる火傷や肌の弱い方は気をつけて下さい)。
便秘改善効果もあるのでヨーグルトと適宜合わせて食べやすくしたものは理にかなっています。
苦味が少なく一般的にアロエと呼ばれる食用はアロエベラです、キダチアロエは苦味が強い。乾燥につよく、日当たりのよい場所なら手間いらずで育ちます。

5/22

太巻き寿司・飾り寿司・デコ寿司

DSC05352

千葉県の郷土料理でもある太巻きの飾りずし。
古くから冠婚葬祭やおもてなし時のご馳走として、家庭の中で作られ、伝承されてきた巻きものです。海山に囲まれ、食材が豊富、米処でもある地域で少しずつ進化し、季節の美しい絵柄などが楽しく生まれています。千葉県の道の駅に行くといろいろな巻物を見かけますよ、大概午前中に売り切れてしまうので早めに到着するか電話予約します。漬物やチーズなど色々入っていますし、卵巻きなどは特にボリュームがあります。
日本の押し寿司、握り寿司、巻き寿司は、どれもストーリーがあって心躍ります、今日は太巻き祭りずしの参考書を片手に、桃の花と蝶々を巻いてみました。天然の色素で作るグラデーション、楽しいですね。
お米に酢を馴染ませて冷ました酢飯は、血糖値を緩やかに上げるようです。気になる方は、手軽に作れる巻き寿司など日常的に食してみてはいかがでょうか。

5/21

山芋・長芋・山薬

気温が低く感じられる日がまだ5月には有ります。二十四節気(季節の気候や自然の境目、変化を表したもの)の、この頃は、走りの梅雨とも言われ、麦の穂が成長するなど、穀物や植物が天地に伸びる小満(しょうまん)です。
少し肌寒いこんな日は、温かい椀ものと簡単で滋養のあるものを口にしたくなります。ちょうど昨日、道の駅で購入したみずみずしい春大根と春掘りの長芋があるので、大根たっぷりの豚汁と、とろろごはんにします。山芋には、血糖値を下げる効能があるので糖尿病や成人病予防に特にお勧め。胃に優しく、滋養強壮効果を高める調理法はおろすこと。とろろにすると、より身体に吸収されやすくなります、味噌や梅と溶くとお味も効果も上がります。
薬膳で山芋は、山の薬とかいて山薬(さんやく)と飛ばれるほど。身体が疲れた時、胃の調子が悪い時、元気になりたい時にもとろろはおすすめ(長芋のひげ根は、ガスコンロにかざすとチリチリとヒゲ根だけが焼けて消えます)。温かい具沢山の汁ものと合わせていただくとホッとします。

5/19

賀茂茄子・かもなす

京野菜・茄子・ナス・なす・賀茂茄子・炭火焼・

丸い大型でずっしりと重みがある賀茂茄子は、京の伝統野菜の一つで栽培にとても手間がかかります。別名は大芹川といって、主産地が芹川だったことからの由来だそう。京都では味噌田楽・しぎ焼きなどにされることが多いですが、油との相性もとても良くさっと揚げてから調理すると色もきれい。ステーキ風に肉厚に切ってシンプルに焼くと賀茂茄子ならではの食べ応えと共に、クリーミーでトロリとした舌触りを堪能できます。ナスニンのポリフェノールは抗酸化力が高く、活性酵素を抑えてくれる効能が期待できます。

5/18

発酵食・酢・ビネガー

DSC01142

酢は最古の発酵調味料と言われており、万葉集にも登場します。味噌、醤油と並ぶ日本の食文化を支えてきた伝統的な発酵調味料。いろいろな国でも、その土地に根付いたお酒から作られており、名前の由来も判りやすい、例えば日本の酢は酒から作られるので酒編で酢、フランスの vinegar(ビネガー)はvin(ワイン)からくるというように。やわらかな酸味の京都の千鳥酢、心やすらぐ甘い香りのオーガニックアップルビネガー、キリッとさせたい料理に使う岐阜の内堀さんの米酢やリンゴ酢、気分によっては赤酢やバルサミコ酢を日々料理やドリンクに使用しています。酢には血液をきれいにし血行をよくする効果や、内臓脂肪を燃焼させる、疲労を回復させるなどの効能が期待できます。スクランブルエッグやチョコレートケーキにひと垂らしすると、しっとり仕上がりますよ。私はカルシウムも摂取できる昆布を入れ、ナチュラルな甘みの為にクコを入れた薬膳酢を作り置きして楽しんでいます