井澤由美子の食薬ごはん Yumiko Izawa

食薬ごよみ

四季のサイクルに合わせて食すことが、身体を健やかに導く手助けをしてくれます。
季節の食材とその由来や歴史、食にまつわるお話をご紹介します。

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ハチノス・トリッパ・もつ煮込み・コラーゲン

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牛にはいくつの胃があるでしょうか ?答えは4つです。では、その順番はわかりますか? 
まず第1の胃は、食物繊維を分解する役割のミノと呼ばれる部分、第2の胃は食べたものを食道まで押し戻す役割のハチの巣、第3の胃は他の胃に食べ物が入る時の量を調節する機能があるセンマイ、第4の胃は胃液の分泌など消化器の役割をするギアラです。どれも焼肉屋さんでホルモンとして耳にする言葉ですが、ハチの巣はイタリアや中国でもよく食されます。
イタリア版のもつ煮込みのトリッパをご紹介します。牛の胃はどの部位でもかまいません。下処理は、表面をよく洗って1度茹でこぼし、黒い部分(血の塊など)があれば取り除く。再度きれいな水から茹でますがこの時、香草やねぎ、生姜などを入れて煮ます。水でしっかり洗ってから本調理すると、臭みがとれて柔らかい。写真は赤みそとザラメ、薬味で煮込んだ煮込みでこんにゃく入りです。残り少なくなったらごはんにのせてプチ丼にし、とろみのついた濃厚なタレを絡めていただきます。トリッパはお酒も進むし、もつのコラーゲンで肌もきれいになります。

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新わかめ・めかぶ・ごま油・便秘改善

海藻・若芽・和布蕪・めかぶ

春先だけに出回る生の和布蕪(めかぶ)はわかめの茎部分。めかぶに含まれるフコイダンという成分は免疫機能を上げ、胃の粘膜を保護します。豊富なヨウ素(ヨウド)は発がん抑制効果があるそうです。
最近、わかめと思いっきりたくさんの針生姜を入れたごま油炒めにはまっています。わかめはしっかり水気をふき、胡麻油とたっぷりの針生姜、赤唐辛子をちぎったものを炒めて、最後にジュっと醤油で味付けするだけ。わかめの食感が滑らかで美味しく、いくらでも食べれます。薬膳では、ごま油には腸の乾燥を改善させ、皮膚を潤す効能があります(繊維たっぷりのわかめと合わせると乾燥便秘に特によく効きます)。
我が家ではさっと茹でるだけの「旬わかめのしゃぶしゃ」も定番で毎年の楽しい行事となっています。

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うど・独活

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山の息吹のようなうどを食べると胸が清々(すがすが)します。高血圧を防ぐカリウムも豊富。
中医学では神経痛や関節炎などを「痺証・ひしょう」と言い、寒邪、湿邪、風邪の3つの邪気(病気の元)から来ると考えられています。うどにはこの3つの邪気を取り去る効能があるとされていますよ。
ホイルで包んで焼くと、皮もスルリとむけて究極に香りが立ち、トロリとした食感が美味。皮を剥いてぶつ切りにし、酢みそでいただくと相性良し。サラダも美味しいですよ、氷水に酢少々を入れた冷水に5分漬けたら水気をきってスライスし、粗塩とオリーブオイル、柑橘の果汁を混ぜたドレッシングをかけます。泡もいいし、白ワインとうどの香りの相性は抜群ですよ。里山のうどは良い香り。購入する時は産毛が濃いものを選びましょう。

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菌・春の椎茸(しいたけ)・薬膳

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きのこは秋のイメージがありますが、春のしいたけも美味。中医学では気や血の流れを良くするとされています。きのこは麹(こうじ)と同じ菌類の仲間で、「子実体」と呼ばれる菌そのもの。効能が高く、旨味が強くて低カロリー、調理しやすいのも嬉しいですね。豊富に含まれるβーグルカンは免疫力を上げ、生活習慣病予防や抗ガン作用が期待できます。丸々太った肉厚のしいたけを道の駅で買いました。ヒダの部分を上向きにおいて粗塩をふってシンプルに焼く。軸の部分からさいて口にほおばると、厚みのある部分はコリコリとして、ちょっとアワビのような食感と風味です。
ザルに広げて風通しのよい場所で1日くらい干すと冷蔵庫で5、6日持ちます。また、数日日光に当ててカラカラに乾くまで干すと、ビタミンDたっぷりの干ししいたけになります。ちなみにきのこを数種類合わせると旨味がグンと上がります。

2/16

氷魚・ひうお・鮎稚魚・鮎

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鮎の稚魚のひうお。生きている時は、透明感があってキラキラと輝きキレイ。氷のように透き通っているのが由来で、氷魚(ひうお)と呼ばれます。2、3月頃にはしらすより大きく育ち、食べ応えがあるのでかき揚げやフリットにも最適。鮎の旨味がちゃんと感じられて最高です。佃煮や卵とじなどにも向いています。潰したにんにくと赤唐辛子、オリーブオイル、塩、こしょうで煮た「ひうおのアヒージョ」も美味。これはバケットを添えて楽しみたい。
琵琶湖周辺の駅の売店でもひうおの釜揚げなどが販売されており、鯉の甘露煮と小エビの佃煮もお土産に購入しました。
漁の解禁日は毎年12月1日で、生きたままの活鮎は養殖用の鮎苗となり、全国の河川に放流されるそうです。
お料理を堪能しながら、ひと口こんなに沢山食べて良いのか?と脳裏をかすめるのですが、余剰分として販売されているので大丈夫なのだそうです。鮎はカルシウムが豊富で、酢の物にすると吸収が良くなります。5月頃になると魚らしくなって小鮎と呼ばれるようになります、新緑の頃が待ちどおしいですね。

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 酒粕・白味噌・ホットショコラ・発酵食

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今日はバレンタイン。ホットショコラショーをスタッフ皆で楽しみます。白みそをアクセントにした、酒粕とホワイトチョコレートのホットドリンクです。仕事中なので、酒粕(練り粕)、牛乳、アーモンドミルク、豆乳を小鍋に合わせて火にかけ、煮立つ直前で火を止める。あとは、白味噌と割ったチョコレートを溶かすだけ。
バニラエッセンス少々とカルダモンを1粒落とすと、奥行きが出て風味豊かになります。
短時間熟成で甘みがある白みそは塩分濃度が6%前後と低く、乳酸菌が豊富。なめらかでコクがあり、柔らかい塩気がこのドリンクの良いアクセントに。
酒粕のレジスタントプロテインは食物繊維のような働きをし、腸の老廃物をからめ取って排出します。また米麹は美肌に有効な成分を含むため、米麹の割合が多い白味噌と合わせると、美白・美肌効果も上がりますね。

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ふきのとう・蕗の薹

蕗の薹・ふきのとう・井澤由美子・食養生・食薬ごはん・山菜・デトックス・薬膳・

春の訪れを最初に告げるふきのとうは、日本原産の山菜。春先のスキー場で見つけては、母へのお土産にしていたのが懐かしい。ふきのとうを手に入れたら、とにかく早く調理して香りと水分が逃げないうちにいただきたい。摘みたてをてんぷらにすると香りがグンと開きますよ、葉を広げるようにして薄い衣に潜らせてサッと揚げると花のようになって可愛らしい。白身魚のすり身と混ぜてお椀に落としたしんじょうは、春の訪れを感じさせてくれます。みそと砂糖を合わせたほろ苦いふきみそは、ごはんのお供や、田楽、和え物など何にでも合うので毎年沢山作りおきます。
春の山菜の苦みは、冬に溜まった老廃物や毒素を排出するなどデトックス効果が高いので、積極的にいただきたい食材。

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和菓子・京菓子

生活の中に和菓子や餅文化が寝付いている京都。季節や行事に合わせて作られる研ぎ澄まされた職人技が詰まったお菓子は雅なかぎり。街並みに溶け込む木型屋さんの軒先を通るとを、美しい和菓子の型にワクワクします。1月は花びら餅、2月は椿餅、3月は引千切、4月は桜餅、5月は柏餅、6月は水無月、7月はあんころ餅、8月は水ようかん、9月は月見団子、10月は栗鹿の子、11月は亥の子餅、12月は雪餅と続きます。
京都に行くたびに顔を出すお茶屋さんに寄って、手にした和菓子に合わせて厳選してもらい、お土産にする。菓子とお茶がピタリと合って至福の時間がゆっくり流れます

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酒粕(さけかす)・美肌効果

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醸造過程でもろみから酒を絞った後に残るのが、酒粕。食物繊維が多く、糖質やたんぱく質も含む非常に栄養価が高い発酵食品です。酒粕に含まれる話題のレジスタントプロテインは、血中コレステロールを減らす働きがあります。食物繊維と同様に整腸作用も促します。
皮膚や粘膜を補うビタミンB2も多く含まれるので、美肌効果が高いのも嬉しいですね。糖尿病、高血圧、便秘解消にも有効です。酒粕には板粕、バラ粕、練り粕などがありますが、熟成させた旨みのある練り粕は、柔らかくて調理しやすい。板粕ならみりんと合わせて600Wのレンジに40秒ほどかけると、さらに柔らかくな理、甘味もついて漬け床に丁度良い具合になります。酵素の働きも高まります。
別冊きょうの料理NHK「シニアの元気 ・菌の力でおいしいレシピ」に酒粕のことやレシピものっています。

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キムチ・ポッサムキムチ・発酵食

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韓国は世界の中でも有数の発酵食大国。キムチを朝、昼、夜といただくからだそうですが、当然キムチを作る量もとても多く、家族、ご近所総出で手作りします。キムチ用の冷蔵庫も各家庭に常備されているのが当たり前の文化。私もキムチ好きですが、中でもポッサムキムチが特に好み。栗やナツメ、松の実、アミの他に、カキ、タコなどの海鮮類なども入るので、辛いばかりではなく旨味と甘みが複雑に重なりあって、コクがありとても美味しいと思います。
ポッサムとは包むと言う意味だそうで、外側の葉で具を包み2〜3週間ほど寝かせます。贅沢な材料で作られるので、王様のキムチとも呼ばれるそう。
ちなみに韓国の白菜は葉の厚さや形が違って、日本の白菜よりやや小さめ。贅沢な具材もおさまりやすく、形良く仕上がります。日本の白菜で作る場合は小ぶりのものを選ぶといいですね。