井澤由美子の食薬ごはん Yumiko Izawa

食薬ごよみ

四季のサイクルに合わせて食すことが、身体を健やかに導く手助けをしてくれます。
季節の食材とその由来や歴史、食にまつわるお話をご紹介します。

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あんず・杏・杏仁・薬膳・漢方・デザート

杏・杏仁・あんず・食養生・薬膳・食薬ごはん・漢方

ほんのり甘い香りに気づいて見上げると、杏の実がたわわ。杏のやわらかな色合いを目にすると幸福感が生まれます。完熟杏は香りよく果肉も食べやすい、旬が短いので見かけるたびに堪能します。子供の頃によく食べたクレープは、生クリームやチョコバナナではなく、甘酸っぱいあんずジャムを薄く塗ったものでした。美味しく感じる温かいジャムは、杏の香りが際立って子供心に本当に美味しく感じたものでした。
杏は、ドライフルーツにしてもいいもの。半分に割って種を取り、低温のオーブンか果物乾燥機でセミドライにします。これを、黄色いパプリカとオリーブオイルで蒸し焼きにして冷ませば、お互いの良いところがきわだった鮮やかな冷製サラダになります。
杏はカロテンが非常に豊富で、粘膜をうるおす効能があり、通便作用もあります。種の中身(仁)は漢方薬の原料、杏仁 (きょうにん)。有名な杏仁豆腐の素ですね(生の種では食べられません)。
白きくらげは肺を潤す食材と言われていますが、氷砂糖と1時間半ほどゆっくり煮てトロトロにし、そこへ杏仁の粉を加えると咳や痰を切り、美肌に導く美味しいデザートになります。冷たくても温かくてもおすすめです。気分でレモン風味でさっぱりさせるか、生クリームで滑らかなコクを出すか、毎回悩ましいのです

6/13

国産ライチ・宮崎ライチ・レイシ・茘枝

ライチ・レイシ・楊貴妃・茘枝

楊貴妃が愛したという伝説のレイシ。
皮がグリーン色のプリンセスグリーンライチや、赤皮の黒葉ライチなどが有ります。紅茶やゼリーなどの香り付け、カクテルベースのリキュールなどにもなっていますね。
薬膳では血を養う手伝いをし、肌や髪、爪の乾燥などに潤いを与え、アンチエイジングなど美容に良いとされている果物です。喉の渇きを緩和し、脾胃を補うので食欲不振などにも有効。
そのままで充分美味しいですが、量がある時は、良い香りのスパイスを軽く効かせたシロップに漬けて冷やすと美味しい。
最近では国産も出回り、今が丁度旬です。4Lサイズの梅くらいの大きさがあり、とても立派。とつひとつ手作業で完熟をもいで、丁寧に箱詰めされて郵送されます。みずみずしいフレッシュ感にすっきりとした甘みとバランスの良い酸味が特徴。皮を剥くと美しい半透明の白い果肉が美しく、その滑らかを表しています。時間と手間を惜しまず作られているので、少々値が張るプレミアム、一年に一度のお楽しみです。

6/12

チーズ・コンテチーズ・Comte

熟成コンテが好きで、いつも冷蔵庫に入っています。
コンテはフランスで最も親しまれているチーズ、生産量もフランス1でAOPの20%以上をしめています。
スイスとの国境近く、アルプスにほど近いジュラ山脈一帯のフランシュ・コンテ地方は冬は寒さが厳しく、しいて言えば北海道のような環境です。熟成士によって丹精込めて作られており、添加物は一切使わず、水分を抜くハードタイプなので旨味が凝縮しています。45種あるフランス産AOP(原産地故障保護)チーズの1つです。
ワインの勉強を少しかじると、テロワール(土壌・その土地の気候)について勉強しますが、チーズもその土地土地が反映された美味しさを個々に醸しだすもの、個性が表れます。牛が食べる草や干し草など、時期によっても風味や色が変わる、これはバターも同じですね。若いコンテは調理にも向いていますが、私は結晶化したシャリシャリ感や、芳醇で凝縮した風味が好きなので、熟成期間が長いものを選んで果物などとそのまま楽しんでいます。
合わせるワインは同郷のサバニャンで作られる黄ワイン「ヴァン・ジョーヌ」とのマリアージュを1度お試し頂きたいです。ナッツやハニーの華やかな香りのワインや、樽が効いたシャルドネ、濃密な香りの貴腐ワインもいい、もちろんシャンパーニュもお勧めです。

6/11

じゃが芋・ポテト・新じゃが

新じゃが・じゃが芋・ポテト

じゃが芋はとても生命力が強い野菜、世界中で栽培されています。豊富なビタミンCは、デンプンに守られているので比較的熱に強く、クセがないのでどんなジャンルもすんなり受け入れてくれる頼もしい存在。
薬膳では胃腸を活性化し、便秘やむくみ改善などに薬効があるとされています。ドイツではじゃが芋をすりおろした汁やスープは胃腸症に効くとされる民間療法です。
じゃが芋の芽を見つけたら、ソラニンと言う有害物質なので取り除きます。茹でる時は、3つまみほどの塩を加え、皮ごと水から茹で、低温の60度くらいでゆっくり火を入れると酵素が働いて甘くなります。
北海道で始めて(インカのめざめ)を口にした時は、その栗のような色とほっこりした甘みにじゃが芋の観念が変わったのでした。固めに下茹でし、皮ごと太めのくし切りにして片栗粉をまぶしてカラリと揚げると最高です。
栄養もあり、お腹を満たすアレンジ自在なじゃが芋、フランスでは大地のりんごと呼ばれています

6/10

ドクダミ・どくだみ・漁腥草・十薬・虫刺され

井澤由美子・食薬・食養生・ドクダミ・どくだみ・十薬・魚腥草

あちこちでどくだみの白い花を見かけます。
どくだみは「十薬」という生薬名がつくほど多くの薬効があり、馬にも効くので昔はよく使用されたそうです。
人には便秘、肌荒れ、虫刺され、高血圧、利尿作用、アレルギー症状などに効能があり、生命力のとても強い湿地を好む薬草。
独特の苦味と香りがありますが、身体の老廃物を排出させるデトックス効果があります。
虫刺されにも効きますよ、実際にブヨに刺されて腫れた時にドクダミをホイルに包んでしばらく焼いてから、よく揉んだ葉を患部にこすりつけると痒みと腫れが直ぐに治まりました。花を焼酎に漬けたドクダミチンキも効くそうで、これらは昔ながらの民間療法です。
どくだみ茶の作り方です。茎の部分から刈り取ってよく洗って、束ねて逆さにし、風通しの良いところでしっかり乾燥させます。3、4cmにカットし、お菓子や海苔などについている乾燥剤を入れ(湿気が気になるようなら極弱火で数分間乾煎りしても)保存します。いただく時は、ざっと湯をかけて洗い、水から弱火でゆっくり煎じます。

6/9

スイカ・西瓜・すいか

スイカ・スイカジュース・西瓜

幼少の頃から一番好きな果物(野菜)はスイカ。熊本から素晴らしく大きく、そして完璧な熟れ具合のスイカが届きました。スイカもメロンも熊本産は美味しいですね。
近年ではカットスイカを購入することが多くなりましたが、昔は1個買いが普通でした。八百屋さんに食べ頃を選んで貰って、子供心にその所作さを見るのが楽しみでした。購入する時はヘタの回りがへこんでおり、縞模様がくっきりしているものが良いそうです。
スイカはしゃりしゃりと甘く水分が多いので身体を潤してくれますね、リコピンやカロテンが豊富。利尿作用もあるのでむくみ改善にも。白い部分は薬効があるので浅漬けや糠漬けなどにします。
スイカが少し余ったら、梅干しとジュースにしたり、パンに合わせてきっちりカットし、生クリームとフルーツサンドにして冷やしておくとこの上ないデザートになります

6/8

新じゃが芋・粉ふき芋・ポテトフライ・むくみ・美肌

じゃが芋・新じゃが芋・こなふき芋

水分量が多く、みずみずしい新じゃがは滑らかな舌ざわりで美味しいですね。皮も薄く柔らかいのでまるまるいただいて下さい、栄養価は皮の近くに有ります。
1番のお勧めの食べ方は、シンプルな粉ふき芋。タワシで擦り洗いしたじゃが芋を、水から入れて低めの温度(60度)でゆっくり塩茹でします。酵素が働いて、甘みが増しますよ、火が通ったら余分な湯を捨てて水分を飛ばし、皮がパンと弾けるように粉ふき状態にするとじゃが芋の醍醐味を味わえます。
人気のポテトフライは皮付きで食べやすくカットし、低温の油から入れてある程度火が通ったら温度を高上げ、カリっと仕上げます。半透明になるまで下茹でして水気を拭き、片栗粉をまぶして揚げるのもお勧めです。
それから、じゃが芋をごくごく細切りにして水に放し、さっと茹でて冷水で〆たシャキシャキ新じゃが麺も良いものです。うすい麺つゆ程度のお浸しや酢の物にしてていただく和風の食べ方と、オリーブオイルと柑橘のドレッシングや中華辛味ダレなど気分で。
じゃが芋は体の余分な塩分を排出したり、胃腸が弱った時の救世主的存在。ビタミンCが豊富、コラーゲンが多い食材と一緒に調理すると美肌効果を上げる手助けをします。

6/7

新茶・緑茶・日本茶・ほてり

井澤由美子・薬膳・薬食同源・緑茶・新茶・グリーンティー・カテキン・水出し茶

緑茶は頭をすっきりとさせ、身体の余分な熱をとる効能があるので更年期障害、ホットフラッシュやほてり感のある方に特にお勧めです。日中は、日差しが強く汗ばむ陽気になってきました。新茶にはテアニンが豊富、爽やかで清々しい香りと甘みが堪能できます、一番茶をぜひ楽しんで下さい。
日本茶は昔から消化促進、虫歯、口臭予防などにもよいとされ、ビタミンCも豊富です。市場に行くと必ず立ち寄っていたお茶屋さんは、丁寧に1杯のお茶を入れて下さる。時間がなくてもこのひと時を持つことで、頭の中が整理整頓されるので、お茶の時間はとても有意義だと思います。
好きな飲み方があります、器に茶葉を入れ氷を多めにのせて一晩冷蔵庫におきます、翌朝にはカフェインの少ない旨味が凝縮したアイスティーが出来上がっています。

6/6

らっきょう・辣韮・疲労回復

井澤由美子・食養生・まいにち食薬養生帖・疲労回復・らっきょう・ラッキョウ・甘酢漬け・漬物・きび酢

らっきょうは中国原産で中薬学では韮白(がいはく)と言う名の生薬、日本では畑の薬と言われるほど豊かな効能を持っています。行気薬(気の巡りをよくする)であり、野菜の中でもトップクラスの水溶性食物繊維を含みます。腸内の便を吸収するので、便秘解消に薬効があります。
ネギ類なので匂いがありますが(硫化アリル)、血行を良くし、血液をサラサラにします。購入時は丸みを帯び、あまり芽が出ていない新しいものを選んで下さい。
甘酢漬けの作り方です。らっきょう1㎏は茎と根元ギリギリの部分を切り、ボールに入れて流水で薄皮を取るようにこすり洗いする(剥きにくい時は、包丁で切った部分から引っ張るようにします、傷んでいるものがあれば除くか、包丁で剥く)塩大さじ2でもんで20分ほど置き、ざっと水で流す。熱湯で8〜10秒茹でてそのままザルに広げて冷まし、消毒した保存容器に入れ、種を取った赤唐辛子2本と昆布一切れを加えます。小鍋に水160cc、グラニュー糖か氷砂糖(ハチミツやきび砂糖でも)250g入れて溶かし、酢350ccをまぜて冷ましてらっきょうの入った瓶に注ぐ、2週間後から食べられます。
大事なのは芽が成長するので購入したらその日に仕込むこと、後は時間が美味しくしてくれます。

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メロン

メロン

メロンは本当は果菜(野菜)の定義。しかし、市場や栄養学上の分類では果実、果物として取り扱われますね(苺やスイカも同じです)。
一般的にメロンは糖度が高い果物というイメージですが、カリウムが特に多く塩分が気になる高血圧やむくみの気になる方にはオススメです。メロンのビシソワーズは旬同士の良い組み合わせ、配合がよければとても美味しいジャガイモのスープになります。ワインのお供としては生ハムメロンが定着していますが、メロンの熟し加減でこその美味しさです。旬のメロンをポンと割って種を取り、スプーンで大きくよそって薄はりのグラスに盛る。ビンごと凍らせたトロリと冷たいジンを注いだ、ジンメロンパフェは初夏の風にぴったりで、毎年の楽しみ。ソーダにアイスをのせて本物のメロンクリームソーダも楽しい。
オススメの一皿は、キリッと冷やしたメロンに少し辛味のあるオリーブオイル、摘みたてのバジルを散らしたバジルメロンのシンプルサラダ!