井澤由美子の食薬ごはん Yumiko Izawa

食薬ごよみ

四季のサイクルに合わせて食すことが、身体を健やかに導く手助けをしてくれます。
季節の食材とその由来や歴史、食にまつわるお話をご紹介します。

1/18

中国山椒・麻婆豆腐・冷え

真っ茶色の本格的な四川麻婆豆腐が出てくると嬉しくなります。中国山椒(花椒・赤い山椒・ホワジャオ)がたっぷりと入って、辛いと言うより舌がビリビリ痺れるくらいの容赦ない大人の麻婆豆腐。150年前ほど前に、四川省に住む陳さんという料理上手な女性が材料があまりない中で、山椒、豆豉、辣油、豆腐、牛肉などで
が作ったのが始まりだとか。日本には昭和25年頃に、日本人向けの味付けにして広めたのが陳健民さん。これは有名な話しですね。牛肉は体力を回復させて抵抗力を上げ、豆腐は身体を潤し、にんにく、生姜、ねぎ、唐辛子は血行を促進させるので、寒い季節に良いですね。豆腐の下処理ですが、2cmくらいに食べやすく切り、塩少々を加えた湯でゆらりとするくらいの火加減で下茹でします。厚手のキッチンペーパーに包んで600Wのレンジに2、3分かけるだけでも良いでしょう。中国山椒の青山椒(タンジャオ)は赤くなる前のもので、爽やかな香りと辛味が特徴的です。熟した赤い山椒(ホワジャオ)は痺れるような辛さがあります。私はブレンドして使うこともあります

1/17

うどん・卵とじうどん

DSC09230

寒い日には特に美味しく感じる熱々の麺類。今日はことのほか冷えるので、おろし生姜をたっぷり添えて卵とじのおうどんに。鰹と昆布出汁を温めて、醤油やみりんで濃いめに味付けし、水で溶いた葛(片栗粉でも)で強めのとろみをつけます。これをべっ甲あんといいます。うどんの主成分はデンプンの炭水化物で、胃に止まる時間が短く、消化されやすいのが特徴です。出汁や具材の栄養を丸ごと摂取できるので、バランンスの良い食事になります。
卵は溶いてそのまま加えるのが定番ですが、別の小鍋に少々の出汁を温めて、溶いた卵を流す入れ、器に盛ったうどんにのせる方法もお勧め。卵がふんわりして美しい仕上がりになります。あんで閉じると料理が冷めにくくなる利点もありますね。卵は体に吸収されやすいたんぱく質を含みます。また、生姜と葛は生薬でもあります、血行を良くし体を温めます。

1/15

にしん漬け・漬けもの・発酵食品

写真 3

北海道の知人宅でいただいたにしん漬けは麹が多め。おみそ汁と同じようにそれぞれの家庭の味付けがあるそうです。市場で見かけたものすごく大きなキャベツは「札幌大球」といって、普通のキャベツより5倍くらい大きい。収穫までに半年かかるそうで、歯ごたえはあるけれど甘くて柔らかいのが特徴です。にしん漬けは、このキャベツとかぶや大根、人参、みがきにしん、麹、唐辛子、塩を使って作られる郷土料理で、寝かせるだけ味が馴染んで美味しくなります。大人になって初めて食しましたが、奥深い味わいでしみじみ美味しい贅沢な発酵食品です。塩麹は近年商品化もされていますが、昔はなかったはず。麹と塩と地産地消の食材で手間隙かけた味が脈々と受け継がれた鰊漬けは、その土地の文化を感じさせてくれる素晴らしい発酵保存食です。

1/14

小豆・小豆粥・小正月・薬膳

15日の小正月(こしょうがつ)の朝、豊作や健やかな1年を願って小豆粥を朝いただく風習がありますね。
今日は鏡餅のお下がりで焼き餅ぜんざいを作ります。指で潰れるくらいに柔らかく下ゆでした豆に、きび砂糖や甜菜糖を豆と同量加えて、隠し味に粗塩少々を加えてよい塩梅にします。鏡開きで開いた(割った)お餅を(水に浸してふやかし、トースターに入れる)香ばしく焼いて浮かべます。
小豆には解毒作用があり、体内の余分な水分を排出するなど、デトックス効果が高いのです。利尿作用もあり、むくみ解消も期待できます。最近では蒸し小豆などの調理済みの商品もあるので、思い立ったら直ぐに料理に活用できます。サポニンも含む小豆は、甘味だけでなく、サラダやスープ、煮込み料理などにも入れて日常的にいただきましょう

1/11

生姜・しょうが・干し生姜・冷え

足元の冷たさが気なり、生姜に手が伸びます。ショウガオールとジンゲロンの体温め効果は高く、慢性的な冷えを和らげます。少し濃いめのあんをかけ、たっぷりのおろし生姜をのせたうどんや湯豆腐は消化もよく夜食にもピッタリ。子供が受験生の頃、お腹を満たし過ぎずに免疫力をつけたくて生姜をよく活用しました。少し多いかなと思うくらいの量の細切り生姜を炒め物や炊き込みごはん、スープ等に加えるのですが、バターやオイル、肉類を加えると脂や加熱で辛味も和らいで子供でも食べやすくなります、生姜オールは100℃以上で加熱すると増加します、覚えておきたいですね。ホットミルクにおろし生姜、ターメリック、ナツメグ、蜂蜜を加えたジンジャーラテも集中力を高めながら美味しくいただけます。
干し生姜は胃にも優しく、芯から体を温める効能が期待できます。保存が効くのも良いところ。皮付のまま生姜を薄切りにして、ザルに広げてカラカラになるまで干すだけ。乾燥剤を入れて密封保存します。香りも良い生姜は気の巡りもよくするので、普段のお茶やおみそ汁などにも干し生姜を気軽に加えてリラックス効果が期待できます。

1/10

ひじき・ヒジキ

ひじきは鉄分、カルシウム、食物繊維、マグネシウム、亜鉛、ビタミンなど栄養価の高い食材。たとえば、貧血や抜け毛が気になる方には、ひじきとレバー、にんじんを煮たお惣菜がおすすめ。ひじきと同様にレバーは鉄分が多く、にんじんには肌や髪を健やかに保つビタミンAがたっぷり。骨粗しょう症予防には、ひじきと玉ねぎのビネガーサラダをどうぞ。酢をベースにしたドレッシングであえれば、カルシウムが体に吸収されやすくなります。玉ねぎの血液サラサラ効果も期待できて、いいこと尽くめ。
ひじきは手軽に戻せるので、卵焼きやお味噌汁に入れるなど、こまめに食卓にとり入れてみて。中医学では黒い食材は腎機能を高めると言われており、老化防止・エイジングケアに有効です。
昔の乾燥ひじきは鉄釜で炊いていたので、鉄分が多く含まれていたようですが、いまはステンレス釜の製法が主流のため鉄分の量は少し減っています。鉄以外の栄養素も豊富で、しかも美味しいので、私のお惣菜ではひじきの登場率は高く、とても重宝しています

1/9

冷凍餅・お餅入りスンドゥブ・スンドゥブチゲ

今日はお正月で余った冷凍しておいたお餅で旨辛チゲを作ります。お餅が濃厚な煮汁と半熟の卵が餅に絡まり、とても美味しいお鍋です。寒い日や疲れた時、風邪気味の時に、カンフル剤のようによく効くアツアツのスンドゥブチゲ。食欲を増進させ免疫力を高めてくれる食材の組み合わせで疲れもとれます。
スンドゥブは韓国の定番家庭料理で、豆腐、野菜や貝類、肉、魚などを辛味のあるスープで煮込んだものです。韓国では、やわらかい豆腐を使いますが、比較的近いおぼろ豆腐で代用できます。作り方は、鍋にごま油、おろしにんにく、豆板醤を入れ熱し、刻んだネギ、白菜、豚バラ肉を炒める。材料がかぶるくらいのいりこ出汁を加えて煮立て、味噌、醤油、みりん、あさりを入れ、スプーンで大きくすくった豆腐を加える。冷凍餅は耐熱容器に入れてかぶるくらいの水を加え、1〜1分半レンジ加熱する。お餅を鍋に加えて2、3分煮る。火を止めて生卵を落とし、好みでコチュジャンや、粉唐辛子粉適宜を加えて下さい。

1/8

たらこ・明太子

明太子はスケソウダラの子(たらこ)を、唐辛子や昆布を加えた辛味と旨味のある調味液で漬けたもの。スケソウダラの子は韓国でミョンテ(明太)と呼ばれ、これが明太子の語源です。今日は生食用の塩漬けたらこ(甘塩たらこ)を、タレに漬けるだけのクイック明太子の作り方をご紹介します。小鍋に酒100ccと、切り昆布(または昆布を細く切ったもの)適宜を入れて弱火で煮る。アルコール分が飛んだら、鰹節ひとつかみを加える。
数分煮て、粗塩か柚子胡椒少々、あれば数種類の粉唐辛子を入れる。唐辛子を多く入れて辛くしたい場合は、砂糖やみりんも加えます。調味液が冷めたら密封袋に移し、たらこ2腹を入れてなじませ、冷蔵庫で保存する。
添加物の入っていない美味しい自家製明太子。辛さも風味も好みに調節できます。私は気分でゆずの皮や実山椒の塩漬けなども加えて楽しみます。

1/7

蕪・かぶ・すずな・お味噌汁

かぶは七草で言う「すずな」です。江戸時代には葉を主に食していた野菜で、葉は実際に栄養価も高い。かぶは根菜類に入りますが、普段私たちが食べている白い部分は茎(胚軸)で、その下の方のチョロリと細い部分が根です。
菊花かぶは歯ざわりが良く、疲れがとれます。皮をむいたかぶの両端を挟むように箸を置きます(下まで切れないように)。縦横に切り込みを細かく入れて(ケンザンのように)30分ほど塩水に浸します。小口切りにした唐辛子、昆布一切れを入れたかぶるくらいの甘酢に、水気を絞ったかぶをつけて1時間以上冷蔵庫で寝かせます。最近、私はこの甘酢にターメリック少々を加えてほんのり黄色に仕上げて、肝機能も上げています。
癖の無いみずみずしい食感のかぶは最も漬物に向き。また、火を入れた時の柔らかいとろみも醍醐味です。甘みが立って柔らかく煮えた熱々のお味噌汁は格別なので、我が家の朝の定番です。かぶは消化不良にも良いとされ、ビタミンC、カルシウムなどが豊富です。

1/6

薩摩芋(さつまいも)・安納芋(あんのういも)

最近人気の甘味が強い安納芋は種子島の特産品です。カットするとオレンジ色が特徴で、免疫力を向上させるβーカロテンやビタミンC、食物繊維が豊富なので風邪予防や美肌効果も抜群。安納芋には安納こがねや安納べになどの種類があり、焼くと糖度が40度前後まで上がります。一般的なさつま芋よりショ糖が多く含まれています。収穫されてから3週間前後たってから、美味しくなるのも特徴です。濡らしたキッキンペーパーに包んで、アルミホイルでしっかり包んで炭火やオーブンでじっくりゆっくり焼くとこれ以上ない甘さ。安納芋でお菓子を作る時は砂糖いらず。焼き芋の皮を除いてマッシュしてデザートグラスに盛り、ホイップクリームをのせるだけで、絶品デザートのさつま芋シャンテリーに。