井澤由美子の食薬ごはん Yumiko Izawa

食薬ごよみ

四季のサイクルに合わせて食すことが、身体を健やかに導く手助けをしてくれます。
季節の食材とその由来や歴史、食にまつわるお話をご紹介します。

9/16

つがに・ツガ二・モクズガニ・郷土料理

つがに・ツガニ・モクズガニ・カニ

ツガ二を始めて食したのは、4年前の今頃。日本一綺麗な清流と言われる高津川でとれた元気な川ガニ。川のカニといっても、大きめで力が強い暴れん坊、腕にプレスリーの様な毛がヒラヒラと着いているのが特徴です。とっても美味しかったので、組合から自宅に送ってもらい調理してみました。地元では茹でられることが多いようですが、私は網袋に入れて重石押して蒸しました。オレンジ色のミソがねっとりと濃厚で、海カニのミソに負けません。特にメスの内子が美味で、ヤンチャなカニと格闘したかいがあったというもの。
ローカル感溢れるツガ二料理と出逢うと嬉しくなります。地方によって呼び名も微妙に変わり、食べ方も様々。炊き込みご飯のツガ二飯や、皮ごと潰すツガ二汁、里芋と甘辛く炊くいもたきなど、郷土色豊かで楽しい。益田市にある田吾作さんは、日本一の居酒屋と謳われ魚介の鮮度は最高。地産の美味しい新米と炊かれたツガ二の炊き込みごはん美味しかったなぁ。旬の味覚を程よく楽しめました。薬膳ではカニは寒性で清熱瘀血です。

9/13

山芋・長芋・ねばりっこ・滋養

長芋・山芋・ねばりっこ・山薬

「ねばりっこ」は鳥取県の特産品。ご縁があって香りの良いムカゴと共にいただきました。山芋と長芋の掛け合わせのようなお芋で、長芋より少し皮が厚く、粘りがとても強い。まっすぐボディーなので、調理しやすいのがとても嬉しい。おろしたねばりっこを、フライパンでそのまま焼くだけで美味。粉をほとんど加えなくてもお好み焼きのように焼けます。磯辺揚げも、その粘りで海苔にのせて油へ滑らせるだけで簡単。
山芋系に含まれる成分には、たんぱく質を分解する酵素が含まれ胃の粘膜を保護します。体力を回復する効果も高いので養生します。
薬膳では、乾燥させたものは生薬で山の薬と書いて(山薬)さんやくと読みます。喘息や空咳によく、「益気養陰・補脾肺腎」とされています。
私は、疲れたなと思ったら山芋をおろしてお味噌汁に入れたり、蒸し料理にして滋養を高めています。

9/11

酢橘・すだち・スダチ・薬膳

すだち・酢橘・柑橘類・秋の味覚・果物

夜は過ごしやすくなりましたが、日中はまだまだ暑い日もあるこの頃。お肉や鰻など滋養のあるものや、スパイスたっぷりのカレーなどを食してパワーをつけるのも大事ですが、そろそろ秋に向けて、体のコントロールをしましょう。体を冷やすウリ科のものや、辛すぎるものを段々と控え目にし、酸味のあるものを食卓に足していきます。我が家の庭にも少々実っていますが、酸味のキレがよいすだちは、気分を良くしストレスを緩和する手伝いをします。ビタミンがCたっぷり、お水にしぼるだけでも酸味と香りで元気がでます。
旬の梨や柿にしぼるのもよいものですし、そろそろ出回る相棒のさんまにも必需品。酢のかわり使う(すだち酢飯)もゴマを加えるだけで食が進みます。また、白身やイカのお刺身は酢橘と粗塩が繊細な美味しさを邪魔せず、良いところを引き出しますよ。りんごや青い蜜柑、銀杏も育ってきたし、ツクツクボウシも鳴き始め、すっかり秋めいてきました。

9/7

月餅・ムーンケーキ・中秋節

月餅・ゲッペイ・中秋節・ムーンケーキ

月餅は中華圏の秋の中秋節(ちゅうしゅうせつ)の伝統行事にいただくお菓子。今年の中秋節は9月21日です。
まん丸の月を家庭円満や完璧ととらえて見立ているそうです。昔の月餅は、ずっしりと大きくて甘く、小分けにして食べていました。最近では甘さ控え目で、大きさも大、中、小と色々なサイズが販売されています。
私が好きな月餅の一つに、控えめな甘みの中にアヒルの塩漬け卵が入っているものがあります。甘さの中の塩気が効いて美味しい。そして薬膳でもある蓮の実、木の実、ごまなど滋養のある仁がたっぷりと詰まっています。季節の変わり目の今日には、適切な食養生でもありますね。入れ物も凝っていて、刺繍がほどこしてある美しい箱入りなどは、再使用したくなります。
そうそう月餅は包丁でケーキの様にカットして食べると、スパッと切れた切り口が美味しさを倍にします、ぜひお試し下さい。

9/4

ごぼう・牛蒡・牛蒡子・便秘改善

中医学では牛蒡(ごぼう)は生薬。種は(牛蒡子)ごぼうしと呼ばれ、主にのどの治療薬です。平安時代に中国から薬草として渡来しました。今では見方も変わったかもしれませんが、ごぼうを食用とするのは、日本や韓国などの一部だったそうです。一般的なのは、よく見かける滝野川ごぼうや比較的短めな堀川ごぼうなど。秋になると柔らかい新ごぼうが出回ります。みずみずしく香りの良い旬のごぼうで作るサラダは、えぐみが少なくシャキシャキとして気持ちまでスっとします。皮に香りや栄養分があるので、下処理は包丁の背で軽くそぐかタワシでこする程度にしましょう。
サラダや揚げ物、醤油麹と赤唐辛子のキンピラもお勧めですが、厚手の鍋に梅干し、昆布、丸のままのごぼうを10cmに切って、酒と少量の水でじっくり炊く。柔らかな「ごぼうの梅煮」は、ごぼうの土の香りに梅の風味と塩梅がことの他良く合って、シンプルながら絶妙。季節の変わり目にもお勧めのお惣菜です。
ごぼうは、なんと言っても食物繊維が豊富、常食すると体内の老廃物を輩出し、腸内環境を良くして便通をしっかり促します。カリウムやマグネシウムも含むので、むくみ防止にもお勧めの野菜です。

9/1

くるみ・胡桃・ナッツ・食養生・漢方・薬膳

脳を活性化させるくるみ。薬膳ではボケ防止に良いと昔から言われています。手軽に摂取できるのも嬉しいですね。私はいつもドライフィグ(イチジク)や国産の自家製ドライナツメなどを一緒に小袋に入れて持ち歩き、小腹が空いた時に口にしています。
鯛茶漬けのタレにもくるみが必需品です。砕いたくるみ、カシューナッツ、ゴマを、順に加えて焦げないように弱火で乾煎りし、すり鉢でよくすります。濃いめの麺つゆで好みの味に伸ばし、新鮮なお刺身をくぐらせる。後は、熱々ご飯にのせ、おろしわさびや海苔を好みで添えれば贅沢なお茶漬けの出来上がりです。
くるみはナッツの中でも必須脂肪酸のオメガ3を多く含みます。血流の改善を促したり、コレストロール値を下げるなどの他、良質な脂分が腸を潤し、豊富な食物繊維で便秘改善にもお勧めです。1日に口にするだいたいの分量は、7、8粒くらいが目安のようです

8/30

黒きくらげ・木耳・キクラゲ・薬膳

まいにち食薬養生帖・井澤由美子・黒きくらげ・キクラゲ・木耳・薬膳・食養生

きくらげはキノコの一種で黒、白の2種があります。薬膳で黒きくらげは老化防止、エイジングケアに良しとされ、昔から不老長寿の食材とされてきました。最近では国産の生黒きくらげもよく出回るようになりました。生きくらげはぷるぷるとした食感、乾燥したものはコリコリとした独特の食感がなんとも楽しい。
下処理として、あれば固めの石づきを取り、熱湯で(表示通り)茹でて食べやすく切ります。茹で黒キクラゲは生姜醤油や酢の物、春雨中華サラダに入れる、炒め物に加えるなどシンプルに楽しみます。その他、お噌汁やスープ、鍋物に入れる(私はおでんに加えるのが好き)など。加熱調理するものは、下ゆでなしでも大丈夫です。
きくらげには繊維も豊富なので便秘解消にも良いものです。鉄分なども多く、タンパク質やビタミンCと摂取すると、効率よく体に吸収できます。

8/28

無花果・いちじく・イチジク・蒸しいちじく・薬膳

いちじく・イチジク・無花果・薬膳・食養生・蒸し無花果

古代ローマでは「不老不死の果実」とされていたいちじく。いちじくは和食でも繊細な白和えなどいろんな食べ方がありますが、是非一度お試しいただきたい一品をご紹介します。
完熟いちじくが手に入ったら皮をむいて器に入れて蒸し、粗熱をとって冷蔵庫で(蒸し汁ごと)冷やしておきます。次にタレを作ります、指で砕いたカシューナッツ3、4個を乾煎りし、香りが出たら胡麻大さじ1を一緒に炒ります。熱いうちにすり鉢ですって、メイプルシロップ、醤油各同量、酢少々で伸ばしながら好みの味に整えて、さらによくすり混ぜます、これを冷やしたいちじくに適宜かけます。香ばしい香りとトロリとした甘みがいちじくに絡まってなんとも美味、冷たいことも美味しいポイントです。ビールよりスパークリングか白ワイン、日本酒がよく合います。デザートにしたい時は、シンプルにレモンを絞って蒸せば、美しい天然の赤色が引き出されます。
繊維が豊富ないちじくと胡麻を合わせるとグンと便通効果が上がりますね。いちじくは体の余分な熱をとり、喉の腫れをおさえます。更年期の女性によい効能もたくん、母乳の出もよくすると言われています。

8/25

プルーン・プルーンのバルサミコ煮

プルーン・西洋スモモ・プルーンソース

すももの一種のプルーン。ヨーロッパでは「命の果実」と呼ばれ、朝食に食べる習慣がありました。
ちょうど今最盛期で、毎年長野から送られてくるプルーンが楽しみです。甘みも強いのでセミドライフルーツも作ります。今日は、酸味と風味の調和が楽しいプルーンのバルサミコ煮のご紹介です。プルーン1パック(13個)は洗って水気をふき、縦に切り目をいれてひねって2つにわり、種を取り出します。ほうろうなどの厚手の鍋にプルーンと、バルサミコ酢半カップ〜1カップ、はちみつかメープルシロップ大さじ2〜3を入れてとろみがつくまで煮ます(上質なバルサミコ酢の場合は甘みやとろみがあるので量を加減する)。そのままでも美味しいし、酢豚や煮物に加えても。肉料理のソースに最適。奥深くコクのある香りと酸味は、疲れをとって疲労も回復します。
プルーンはペクチンが豊富で、便秘解消にもよく血糖値を緩やかに上昇させます。カリウムも多いので高血圧が気になる方にお勧めの果物です。

8/23

にんにく・黒にんにく・疲労回復

井澤由美子・発酵食・黒にんにく・免疫力・黒にんいくの作り方

まだまだ暑いですが、朝夕は少し秋めいてきましたね。季節の変わり目です、油断して体調を崩さないように心がけたいものです。私の強い味方は黒にんにく。トロリと柔らかく口に入れるだけで衛気が満ちて元気になります。熟成発酵し、フルーツのような甘さがあり、匂いがたいして気にならないのも良いところ。発酵させることで普通のにんにくにはない、Sーアリルシステインというポリフェノールの一種が生成され、にんにくの何倍もの高い抗酸化パワーが期待できるそうです。
古くなった炊飯器などがあれば手作りも簡単、にんにく臭はするので、物置などで私は作っています。
老化防止、生活習慣病予防の他、体温を上げて血行不良を改善、エイジングケアにも最適です。疲れ気味、風邪かな?と思ったら先手を打っていただくとよいかも知れませんね。